ケロロ軍曹

□つぶやき
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「ぐんそーさんぐんそーさん」
「なんでありますか?」
「ぐんそーさんはなんでぐんそーさんなんですか?」
「え? なんでって…軍曹だから軍曹なんでしょ?」
「なんで訊き返すんですか?」
「え、えーと、自分でも確信が持てないから?」
「なんで確信が持てないんですか?」
「…確信が持てないのは、その、自信がないから…」
「なんで自信がないんですか?」
「それは………いや、もう、一体なにが言いたいんでありますか? 今日のタママはなんだか変でありますなあ」
(違うでしょ、変なのはぐんそーさんでしょう。おかしいのはぐんそーさんでしょう。ぐんそーさんは認めたくないだけでしょう、軍曹という階級になるまでの道に塁々と積みあがった屍たちから目を背けているだけでしょう、延々と呪いの詞を呟く怨霊たちから耳を塞いでいるだけでしょう。ひとをころして軍曹になったことを認めたくないんでしょう、ぐんそーさん。でもそんなことをしてるのはぐんそーさんだけです。逃げてるのはぐんそーさんだけなんです。ギロロ先輩もクルル先輩もドロロ先輩もみんなみんな受け止めて受け入れてるんです、そうじゃないと、かわいそうじゃあないですか、なにもできずに逝ったひとたちがかわいそうじゃあないですか! ころしたぐんそーさんが受け止めないと、犠牲になったひとたちが無駄死にしたのと同じことになるんですよ、死に際を見届けたぐんそーさんが受け入れないと、そのたましいはだれにも記憶されずに消えてしまうんですよ! これのどこがかなしくないと言うんですか、これのどこが、かわいそうでないと! そりゃあ受け入れるのは、受け止めるのはつらいです、自分が犯した罪、その事実、衝撃的で、そりゃあつらいです。苦しいし、かなしいですよ、でもぼくたちが、ぐんそーさん自身が受け入れて、受け止めないと、ほかのだれがそうしてくれるんですか! ほかのだれがそうしてあげるんですか! かなしくて、苦しくて、つらいからって、それだけで、ぐんそーさんは逃げるんですか? 生きているぐんそーさんが、それだけで? しんでいったひとたちを、ぼくらとは比べものにならないほどの苦しみを、つらさを味わったひとたちを、そのたましいを抱き締めてあげないんですか? ああ、ああ、もう、ぐんそーさんったら! 耳を塞ぐのは、目を背けるのはもうやめてほしいんです! この、この、どうしようもない、いくじなし!)

つぶやき
(けれど、ねえ、そう言うきみは、どうなんでありますか? かわいそう、それが、ただの同情の言葉でしかないということを、きみは知っているの?)

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