ガンダム00

□あなたがきえた日
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 いてくれればいいのに。

 それは少女だった女が初めて吐いた弱音だった。少年だった男は彼女を振り返りもせず、じっと窓の外の空間を見ている。真っ暗な中にきらりきらりと輝く星が無数に点在する、そんな見慣れた景色のどこに目の遣り場があるのだろうか。

 ここに、いてくれればいいのに。

 女がまた、小さく小さく呟いた。腕を大きく大きく伸ばして、窓に手のひらをつける。その両腕の間で、地球が静かに廻っていた。

 ここに、いてくれるだけでいいのに。

 記憶の残像の瞳はこの地球と同じ色だった。青、蒼、碧、どれにも属さない、うつくしい眼だった。やさしくてやわらかいその眼は、罪で作られた色をしていた。

 ここに、いてくれさえいればいいのに。

 男はいまだ空間を見据えている。じっと、じっと見つめている。女は窓に手をつけたまま、そのまま膝を折った。耳障りな摩擦音が立つのも気にせず、床に膝をつけて額を窓にぶつけた。

 いてくれるだけで、それだけでいいのに、どうして。

 そう叫び泣く女に、男は相も変わらず動こうとはしなかった。

あなたがきえた日
(どうしてあなたはいないの)
(どうしてあなたは捜そうとするの)

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