ガンダム00
□祈りの願い
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よう、お嬢さん。いいや、アニュー、だったかな。はじめまして。
ライル? ああ、ごめんな。おれは、あいつじゃない。あいつじゃあないんだ。あいつはまだ、来ねえよ。まだここに、来ちゃあいけないんだ。
ほんとうに、弟が世話になったな。これであいつも、しあわせを知ることができたよ。あいつはずっと、ひとりぼっちだったからなあ。
…どういうことって顔だな。 じゃあ訊くが、おまえさん、どうしてライルに好かれたのかわかるか?
…わからない? そりゃそうだ、それでいい。ひとの好みなんてそれぞれだ、ましてや他人の好みなんざ、わからなくて当然さ。
おまえさんはな、あいつにとっちゃあ、初めて、自分を認めてくれたひとなんだよ。ああ、おれか? そりゃあ認めてたさ。父さんも、母さんも妹も、ちゃあんとあいつを“ライル”として見ていたんだ。あたりまえだ、家族だったんだからな。でも、あいつはそれがわからなかった、ただの同情だと、勘違いしてたんだよ。おれがいたからな。
あいつは誰かが自分を“ライル”として見てくれるのをひたすら願っていた。ずっとずっと、ひとりだったんだよ。ずっとな。
そんなときにおまえさんが現れたんだ。あいつを誰とも重ねずに、ただ“ライル”として扱って、そして、ひとりぼっちだったおまえさんが。
そうさ、おまえさんたちは、ほとんどおなじだったんだ。ただ根本的なところが違うだけで、ほんとうは、一緒だったんだよ。
ああ、あいつをひとりにしたのは、おまえさんだけのせいじゃあないさ。おまえさんだけのせいじゃあない、だから、だからそんな顔をしないでくれ。泣かないでくれ、おれじゃあ拭ってやれないんだ、拭ってやるわけにはいかないんだよ。
だから、なあ、お願いだ。あいつを、あいつをほんとうにあいしていると言うならば、それならば、あいつのしあわせを祈ってやってくれ。あいつが生きて、わらえるように祈ってやってくれ。あいつは、あいつには、しあわせになってほしいんだ。生きてほしいんだよ、みんなと、しあわせに。だから、願ってやってくれ、祈ってやってくれ。あいつのために。
…おれか? おれにはもう、祈る資格なんて、ありはしないんだよ。
祈りの願い
(その願い自体が祈りだと)
(気づいていないわけじゃない)