ケロロ軍曹

□鈴の音
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 ぼくはひとりだ。


 ひとりでじゅうぶんだ。


 なにもかもじぶんでできるし、


 だれかにてつだってもらおうなんて、


 かんがえたこともない。


 だからひとりなんだ。


 ぼくはおうさまなんだから。


 おうさまは、


 ひとりでじゅうぶんだ。


 りん、
 

 そうやって、


 すずをゆらした。






 でも、


 やはりひとりではたいへんになってきた。


 王になるには、


 手下もひつようみたいだ。


 さあ、


 王のおれにしたがうにふさわしい強いやつは、


 どこにいるんだろうか。


 すずがゆれてる。






 ようやく見つけた。


 血に飢えた獣を二匹、


 どちらも小汚いが戦力としては最高だろう。


 頭脳は傍に控えているミルルで充分だ。


 そしてやはり、


 キルルの教えは正しいようだ。


 力こそ全て。


 力在ればこその侵略。


 力さえ在れば、


 それ以外はなにも必要ない。






 だが、


 なにかが足りない






 そう感じ始めたのは


 いつからだったのか?






 ちりん


 不意に遠くで


 寒々しい鈴の音がした


 駆けてもなにをしても


 漆黒の闇は晴れず


 眩い光は見えているというのに


 掴めない
 

 そのような矛盾


 吾に出来ぬことがあるというのか?


 不可能などありはしないはずだ


 もしそれがあるとすれば


 なにかが足りないということか?


 しからば更に力を得ればよいのだろうか?






 違う


 そうなにかが告げた


 気づけばがたがたと手が震えていた


 何故か


 温かいものが恋しくなった


 意味もなく部下を呼んだ


 なにもない


 そう言ってやれば不思議そうに


 険悪に


 無表情に


 吾に背を向けた






 近頃


 吾はどうかしている


 なにかが足りない


 力だろうか


 りんりんと


 耳鳴りがする


 違う


 そうなにかが告げた


 なにが違うのだろう


 耳鳴り?


 嗚呼


 これは


 耳鳴りなどではない


 鈴の音か


 だが、


 この、


 耳の奥で鳴り響く鈴の音が、


 ひどく吾を、


 むなしくさせるのだ。












(そのむなしさは)




(さびしさだというのに)

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