Story
□惑溺
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着いたのは校舎の奥の体育準備室だった。
「ここのロッカーにスーツを入れてるんですよ。自分はいつもジャージなんで…」
そういって、小野は神谷のスーツをまじまじと見た。
「黒いスーツに黒のYシャツ…」
そう言って、深いワインレッドのような赤色のネクタイを取り出した。
「はい、どーぞ。」
実はそのジャケットとYシャツの組み合わせが好きなんですよ、なんて暢気に言ってるからちょっと慌てさせようと思ってロッカーを背中にさせて詰め寄ってみた。
「ごめん…つけて?」
ちょっと引かれるかな、なんて思っていたけど、いつも奥さんにやってもらってるんですねー、なんて言ってやってくれた。
ちょっとくらい照れてくれたっていいじゃない。
「神谷先生、でき…」
小野先生の口を塞いでみた。
彼の顔が赤くなるのも、自分が焦ってる感覚も何となく分かる。
舌を入れると、小野先生の腰が抜けていってるのが分かる。
コンコン、とドアをノックした音が室内に響く。
「小野先生?」
静かにしてるといないのかなー、と生徒の声がして同時にチャイムの音がなった。
…………ここまで、か。
口を離して起こしてあげると、恥ずかしくて何も言えないみたいだ。
「小野先生…?ネクタイ、ありがとうございます。後で返しにきますね。」
そう言って返す時を楽しみに授業へと向かった。
-END-