RPG小説

□弱者の旅立ち
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 僕は、いつも一人だ。ただそこにいるだけの弱い存在、それが僕なんだ。

 父さんは、「勇敢な男になって欲しい」という願いをこめて、僕に大昔の英雄と同じ名前をつけてくれたけど、その父さんは、もうこの世にいない。父さんは七年前に、魔物から村を守ろうとして命を落としてしまった。

 魔物は近くを通りかかった一人の剣士に倒された。その人は、泣いてる僕に剣を一本渡し、「死にたくなければ強くなれ」と言って、去っていった。

 僕には、たった一人だけ友達がいた。でも、その友達も「やらなきゃいけないことがある」と言って、僕に一つだけ魔術を教え、姿を消してしまった。

 あの人から剣を貰った日から僕は毎日剣を振り続けている。友達が消えたあの日から、僕は毎日魔術の鍛練を続けている。だけど、どんなに頑張っても、一向に強くなった気がしない。それは、きっと……。

「勇気が足りないんだ…」

 きっとそうだ。僕には、命懸けで村を守った父さんのような勇気、一人で大勢の魔物に立ち向かった剣士さんのような勇気、友達のような外の世界へ一人で踏み出す勇気なんて無い。

 僕は、このまま弱者として一生を終えるのかな…? 僕は、これからどうしたらいいんだろう……。
 

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