桜花 ブック

□七
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「晋助見るならもう少し離れたところから見た方が良いよ?」

「ううん。ここが良い」


寺子屋の庭に体育座りをしてじっと晋汰を見つめる
先生と晋汰が木刀での打ち合いを始めたのは日も落ちかけた頃
激しく打ち合う晋汰と先生に晋助は目を輝かせて見ていた



「っ…子供相手に容赦ないですねっ!」

「手加減したら危ないでしょう?」

「危ないのはこっちの台詞っです!」


その瞬間カーンと音が高らかにその場に鳴り響きカラカラと地を木刀が転がる

まばたきさえ忘れて二人の打ち合いに見入っていた晋助は目の前に転がってきた木刀に現実に戻された































「流石です…先生」

「晋汰の腕の上がりように驚きを隠せませんよ」

「でもまだ先生には勝てません」

「そりゃ今勝たれちゃったら大人として面目立たないですから」


負けるの恥ずかしいしちょっと力んじゃいました、とヘラッと笑う松陽先生
そんな先生の顔を見てため息をつく

「半刻も打ち合って汗ひとつかいてない人になんて一生勝てませんよ…俺」

「大丈夫ですよだいじょーぶ。私がおじいちゃんになったら勝てますよきっと」

「絶対負ける気ないのにそんな事言わないでくださいよ松陽先生」



肩を落とす晋汰の着物の裾を引っ張る晋助
心配そうに下から覗き込む晋助に気が付き微笑むと頭を撫でた






「大丈夫けがなんてしてないから」

「う…うん」

「じゃあ先生」

「はいまた明日」

「はい、ありがとうございました。
ほら晋助も」

「先生!ありがとうございました!」

「晋助もまた明日」


ひらひらと手を振る松陽に頭を下げ晋助の手を握る
そのまま帰路に着くと晋汰はまた晋助に微笑んだ






「いたたーまだ手痺れてる」

「兄さん?」

「あ、大丈夫だよ晋助?ちょっと木刀弾かれた時に手が痺れちゃっただけだから」

「痛い?」

「ちょっとね」

「待って兄さん!おまじないしてあげる」


立ち止まって向き合うと痺れている方の手に手を重た



痛いの痛いの飛んでけー!

(どう兄さん?!)
(うわー凄い晋助!痛くないよ!)
(ほんと?!やったー!)
(……あぁ可愛いなぁ)



to be continued

2010.01.24




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