桜花 ブック
□六
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「あ…忘れてた」
縁側で先生の本を読んでいるとふと大切なことを思い出し急いで草履を履くと外に飛び出した
「……………にっ…兄さんがいないっ!」
いつもいるはずの縁側に大好きな兄の姿は見えず無造作に置かれた先生の本が風にはたはたと揺れていた
慌てて寺子屋内を探し回るも姿は見えず眉を寄せて下唇を噛み緑の大きな瞳には涙が溜まり今にも溢れそうになっていた
いつも兄が座っている縁側に戻るとそこに腰を下ろし膝を抱え顔を膝に埋めた
「……兄さん…っ」
「呼んだ?」
「え?」
顔を上げるとうっすら汗をかき少し息の荒い兄が心配そうに覗き込んでいる
目と目があった瞬間晋助の瞳からポロポロと涙が溢れ兄に飛び付いた
「ごめんね晋助。授業が終わるまで絶対待ってるって約束だったのに」
抱き付いてきた晋助の背中に手を回しトントンとリズム良く背中を叩いてやる
首を横に振る晋助に笑みが漏れた
「約束破っちゃったからひとつ晋助の言うこと聞いてあげるから兄さんのこと許して?」
「ゔん」
「何が良い?」
「今日おうちに帰るまで…
僕のことおんぶして…」
「うん良いよ」
可愛い弟の可愛いお願いを
断れるわけがない
フッと笑うと晋助を縁側に座らせた
「ところで兄さん何処いってたの?」
「あー…うんそれがね」
家に木刀置いてきちゃって
(兄さんうっかり者ー)
(だよねーこれからは気を付けなきゃ)
2010.01.17
to be continued
侍の魂を家にうっかり忘れてきちゃう兄と兄が好きすぎて我を忘れちゃう弟
ブラコンマンセー