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まだまだ寒い今日この頃
梵天丸の3時のおやつに作っていたアップルパイの林檎の皮に包丁を当てたその時














「いっ………ったぁあああぁああいっ!」



家に響き渡る悲鳴と鳴き声

途端バタバタと慌ただしい足音が聞こえたと思うと後ろから何かがぶつかる衝撃がした
後ろを振り返ると頬を押さえ涙をぽろぽろ流す梵天丸がこちらを見上げている



「危ねェだろーが!って何事だオイ」

「い…いたい……っ歯が…」

「虫歯かー?どれ春さんに見してみ」





梵天丸は指で口を広げ奥歯を指差す

明らかに虫歯ですと言っているような奥歯を見なかった事にしようと思ったのは梵天丸には秘密です






「梵…虫歯だな」

「むしば…?」

「歯に悪い菌がついて痛いことしてんの
…しゃーねェ歯医者行くか」

「いっ……医者…?!やだ!」

「わがまま言うなよ!このままだと甘いもん食えなくなるんだぞ」

「それもいや!」

「痛いの我慢して甘いもの食べるか、医者に行かなくてずっと痛いのかどっちかだ」

「ゔぅ゙…でもやだ!」



脱兎の如く走り逃げる梵天丸
唖然と逃げた背中を見ていたがハッとし追いかけた





















「あーもう逃げんなコラ!」

「うあぁあああん!」

「それにそんな走んな!転けんぞ!」

「うぁああぁあんっっギャッ!」

「言わんこっちゃねェ…」


顔面から床にこんにちわした梵天丸があまりの痛さにか踞って震えている
ため息をつきながら覗き込むと顔を押さえている手の隙間から血が見えた






「ちょっ…お前顔上げろ!
血ィ出てんじゃねーか!」

「…っ…ゔぅ…いたい…いた……っい」

「とりあえず手離してみ」




目から大粒の涙を流す梵天丸は口を覆う手をゆっくり離す
手と口の周りが血で真っ赤になっている事に春は目を見開いた



「いてーかもしれねェがうがいしに
行くぞ」

「ゔん…っ」








急いで抱き上げ洗面台に走ると濡らしたタオルで口の周りを拭いてやり、梵天丸専用のコップに水を入れた
痛がるのを承知で口に水をふくますとやはり痛いのか顔を歪ませる

ペッと水を吐くと白い洗面台にカランカランと音が響く
二人して洗面台の中を覗き込むと小さな白いものが転がっていた




「あ…」

「あ…」






手に取って見ると明らかに歯
梵天丸の顔を見るとポカンとただ歯を見つめるだけ
口の中を覗き込むと上の前歯が見当たらない。梵天丸の口と手に持っている歯を見比べていると思わず笑いが込み上げた



「ッ…!」

「あ゙っ笑うな!」

「ごめんごめん。まさか転けて歯が抜けるなんて…っぷ」

「……少し前からぐらぐらしてた…気持ち悪いから放っておいたんだ!」

「なるほー。まァ良かったじゃねーの、お前コレ乳歯だろ?これから大人の歯が生えてくんぞ」

「おとなの、は?」

「だからこれからもっと歯綺麗に磨けよ?」

「……………歯みがくの苦手」

「虫歯になった理由はそれかっ?!梵お前歯磨きサボったろ!」

「サボってないよ!おくの歯が上手にみがけないのー!」








結局虫歯は歯磨き苦手によるもので、乳歯なら尚更治さなくてはいけないと暴れる梵天丸を掴み上げ歯医者に急いだ








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