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「梵、外遊びに行くなら手袋しろよ」

「うん!」


ずっと降り続いた雪もやみ今日は久しぶりの晴れ
木々の間から溢れる光に誘われて外で遊びたがっていた子竜が勢い良く飛び出した





「玄関閉めてけよッさみィだろうが!」


怒鳴ったところで聞きゃしない
良く見れば履けと言った手袋も玄関に放置
ガリガリと頭を掻いて梵天丸の手袋とマフラーをひっ掴むとダルそうに追いかけた


















































「コルァ梵、春さんの言う事が聞けねェのかコノヤロー」




玄関を出て積もった雪を踏み締めながら真っ白な世界に踞っている梵天丸に声を掛けた

声を掛けたにも関わらず反応しない梵天丸は余程遊びに熱中しているらしい




「……ハァー……」


白い息が空に上がるのを見送り、梵天丸に近づくと手元を覗き込む
小さな手いっぱいに掴んだ雪を必死で丸めどうやら雪だるまを作っているようだ



「このちっちぇの梵?」

「うん」



右端の小さな雪だるま
左目の位置だけに石を入れている
見ている此方は痛々しく思えて仕方がない。にもかかわらず楽しそうな笑みを浮かべる梵天丸の頭を優しく撫でた





「これは小十郎!」


自分の雪だるまの隣の少し大きい目の雪だるま。頬に木で傷を入れているのが見える


「…なんでこいつこんなに目付きわりィんだ?もっとちゃんとしてやれよ」

「ううん。小十郎はもっと目付きわるい」





きっぱり言い切る梵天丸を横目に眉を寄せる。この雪だるまより目付きが悪いとかどんだけ悪いのか想像できない

また雪だるまに集中して視線を下に向ける梵天丸から離れ、近くにあった丸太に腰かけると手に持っていたままの梵天丸の手袋をポケットにつめ、逆に入れたままだった煙草を一本取り火を着けた



「まっじィ…」


気がつけば梵天丸が転がり込んで来てからほとんど吸っていない

咳き込むことはしないがとりあえず口に残る匂いに顔をしかめた




「“梵天丸には禁煙効果があります”ってか?…て違うか」


ボソッと呟くと火を着けたばかりの長い煙草を雪の上に落とし、まだ数本入っている煙草の箱ごと握り潰した
荒々しくポケットに突っ込むとまだ口に残る匂いを吐き出すように空に向かって息を吐いた





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