世界が変わる瞬間.book

□第弍話【天敵】
3ページ/8ページ




「・・・何だお前、今日は来るの遅かったんだな」

猫。

ピリピリした空気が儷から消えて猫を優しく撫でると儷の呼び掛けに答えるように鳴く猫。
少し微笑んだ儷は要から猫を取り上げて下に下ろした。

「今日はもう、来ないかと思った」

そう言ってポーチから缶を取り出し蓋を開けた後猫に差し出した。
つまり、猫缶。

あまり餌付けするのは好まない儷だが
如何せん。
一度あげてしまっては猫は餌を貰えると認識して懐いてしまう。
今では此処に来る事と猫に餌をやる事が日課になってしまっている。

「それとも、私が来るのが遅かった?」

無知識人に呼ばれたんだと言いながら猫を撫でたが猫は差し出された物を食べようとせず
その場に伏せて儷に顔を背けてしまった。

それを見た儷はふと猫に出逢った日の事を思い出し苦笑いをした。

「怒ってるのか?」

それでも振り向かない猫に向けて鼻で笑った後、隣で体育座りをして猫をつついた。

それをつっ立ったままで見ていた人間は声をかけたが聞こえなかったのか返事をしない儷
もう一度聞こえるように声をかけるが聞こえない。

いや、これはもう
“無視を決めこむ儷”
と言ったほうがいいだろう。

それにムッとした人間は呟いた

「寂しいね」

その言葉に少し反応した儷は人間に目を向けた

「・・・何、が?」

返事をした儷に人間は勝ち誇った様な顔をして儷を見た。

それを見た儷はそいつの顔に無性にムカつきを覚え立ち上がり人間を睨んだ

「何が言いたいの?」
「べぇっにィ〜?」

さっきまでどうしてどうしてと聞いてきていたが行き成り冷たく答えた人間に儷は確信した。

あぁ成る程。コイツ自分が冷たく答えれば私が反応するとか思ったな。
だからか・・・

「・・・あっそ」




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ