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□放課後
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中間考査も近づいた、爽やかな風の吹く季節。


英語の苦手な僕と、世界史に全く興味のない君とで、教室に居残ってテスト勉強。


英単語の意味を辞書で調べている僕と、うんうん唸りながら教科書とにらめっこしている君。

向かい合ってそれぞれのやるべき事――僕は先生にもらったプリントの文法問題を解いていると、


「そこ、逆。」


と、教科書を見ていたはずの君がカッコのなかの単語を並び替えて正しい文を作れと言う問題の、たった今書き上げた部分が違うと指摘した。


「”Money is important, but it isn't (the most the thing) in life."
"must"と"important"が逆になってる。」


え、と思って正面に座っている君を見上げた僕に構わず、すらすらと英文を読み上げる君が垂れた横髪を耳に掛け直す仕草に見とれてしまっていて。
(根本的な問題で、質問とは全く違う部分を書き間違っているのは指摘しちゃダメだ)


「―――ちょっと、何ボーっとしてんの?」

「可愛い。」

「――ハ?
なっ、ナニいきなり言い出してんの?バッカじゃない!?」


呆れた顔をした君はすぐに真っ赤になって慌て出す。
僕としては、ただ、思った事を口にしただけなのに。


真っ赤なほっぺたと、間違えていない解答まで消してしまっている動揺ぶりがいっそうに可愛く感じる。


くすり、と笑みを零すと、まだ赤みの残る顔でじとりと僕を見やる君が、不機嫌そうな声で言った。


「アンタのせいで手が滑った上に、余計なところまで消しちゃったじゃないの。」


せっかく眠いのガマンしてやってたのに、と漏らされた本音に堪えられなくて笑い出してしまうと、やっぱり、君は耳まで真っ赤にして俯いて、プイとそっぽを向いてしまった。



――バカにして笑ってるんじゃないことを、早く伝えなくちゃいけないのに。



そう思って口を開くけど、「知らない」と一言で切り捨てられてしまう。
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