Type-Zero

□第五話:交渉の末に
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(…暗い)

(ここはどこなんだろ・・・)

上下左右の分からないほどの真っ暗な空間に、地に足がついているのかも疑いたくなる空間に、叶は居た。これが夢なのか、それとも現実に起こっているのかも判断が付かないくらいに意識ははっきりとしていた。自分の姿は確認が出来るが、それ以外は何も見えない。自分一人である以前に周りの状況が確認できないと言うこの環境が、叶に恐怖という感情を与えていた。

どのくらいの時間が経ったのかも分からない。

おなかも空かない。

眠くもならない。

徐々に自分自身も何も考えたくなくなってきたころだった。

『…………ミツケタ…』

どこから聞こえてくるのか分からないが、確かにその小さな呟きは、叶の耳に届いた。
ふと気が付くと、自分の胸の前に小さな明かりが灯っていることに気が付いた。
それは、もともとあったものなのか、今現れたものなのかは分からない。だが、それは徐々に大きくなってきた。体の自由が利かない叶の目の前に徐々に人の形を形成していく光は、自分の目の前、近すぎると言うほうが正解だろうかと思う距離に居た。
居たと言う表現があっているのかも定かではない。
でも、それは、叶には何だか分かっていた。
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