AAA〜トリプルA〜
□第五話:僕と焔とお姉様
2ページ/9ページ
耳に痛い大きな声。間違いない焔だ。
僕がこの風景に見とれている間、焔の声をシャットアウトしてしまっていたらしい。
僕は何事もなかったかのように「なに?」と視線を焔のほうへ向けた。
「まぁまぁ、焔も相変わらずですこと…」
「しかし、セレス様っ!!」
「いいのですよ。」
焔の隣に、めちゃくちゃきれいなお姉様が居た。
綺麗に腰まで伸びた輝く金色の髪。少したれ目なその瞳は、髪に負けないくらいに輝く金色。耳は左近や焔と同じようにとがっている。
セレス様と呼ばれるお姉様は、僕のほうへ一歩歩み寄ると、下を見下ろした。
「今日もとても平和ですこと。この世界、気に入っていただけましたか?」
僕に話しかけてきているのは間違いなかった。今まで生きてきた中で、女性という生き物に縁がなく、耐性がない僕は、どうしていいか分からず「うん。」と普通に返してしまった。
もちろんそれを焔が聞き逃すはずがない。
「おい!!今、『うん』って言ったよなっ!!!セレス様にどういう口のききかたしてんだょっ!!!」
「お前もな」と言いたかったが我慢した。
少しカチンときて、言い返そうと思ったが、僕より先にセレスお姉様が口を開く。
「だめですよ焔。このお方は、私たちの運命を握るお方なのですから。丁寧にもてなすようにと言ったはずですよ。」
「でっでもっ!!」と何か言いたげな焔だったが、セレスお姉様のどこかしら強い圧力に押され、「はい…申し訳ございません…」とうなだれた。
正直な気持ち…
(ざまぁみろ!!!)
と叫びたかったが、心に留めておくことにした。
「塔の中ではいろいろとあったようですね。お疲れでしょう、中に入ってお休みください。」
セレスお姉様はそう言うと、僕を家の中に案内した。
家の中はいたって普通だった。
少し広いだけで、キッチンはかまどだし、一般的な木製のテーブルだった。
例えていうなら、キャンプとかで使う、ロッジに近い雰囲気がある。
僕は、テーブルに案内され、椅子に腰をかける。なんだかキャンプに来ているかのようだった。
セレスお姉様も向かいに座る。焔はどうやら外で待っているようだ。
…ん?まてよ…
焔がいないという事は…
お姉様と…二人きり…!?