AAA〜トリプルA〜

□第四話:赤い竜と謎の青年と
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「僕が・・・」

言われると思ったんだ…なんとなくだけど…

左近は僕に一礼すると、僕から少し離れた。そして、なにやら不思議な言葉を口にすると左近の体は光の粒子に包まれた。

一瞬だった。まぶしい光が部屋を覆いつくしたかと思った瞬間。左近の姿は人の姿をしていなかった。
そう、ドラゴンだ。童話などで出てくるような、長い首に強靭な手足、背からは悪魔のような翼が生えていて、尾の先は槍のように鋭く尖っている。全身はエメラルドグリーンの鱗に覆われ、その瞳は深海よりも深い青色をしていた。もっとも、深海より深い青色なんて見たことも無いんだけれど・・・

《さあ、お乗りください。これより先は、私、語り部・左近が最上階までお連れ致します。》

左近はその大きな体を低くし、僕が乗りやすいように、羽をたたんでくれた。姿を変えた左近は、僕に直接語りかけるのではなく、脳内に直接語りかけてきた。これは、テレパシーという奴なのだろうか?
僕は何の躊躇も無く、左近の背に跨った。想像よりも大きな背中。落ちるなんて事は無いだろうと思わせるような広さだった。先ほどの人の暖かさは無く、鱗の冷たさだけが僕に伝わってきた。

「落ちたりはしないんだろ?」

落ちないという核心はあった。絶対に落ちないという核心が。どういう根拠なのかはわからないけれど、その思いが僕を支配した。けれども、心のどこかに不安があった。それが何なのかはわからないけれども、根拠のない確信をより確かなものにするために、左近に確認を取った。
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