AAA〜トリプルA〜

□第三話:塔に住まう語り部と…
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「ドラゴン退治をしてもらうわ」
「は・・・・・・い・・・?今何って?」

僕は信じられずに居た。まさかでしょうよ。

「ドラゴンって・・・あの、空を飛んで火を噴くドラゴン?」
「そうよ」

千鳥は腕を組み僕を睨みつけてくる。逃げることも、これ以上の質問も受け付けないって言う表情だ。そんな強気な千鳥に対し、僕は足の震えが止まらなかった。体が震えている。恐怖からくる震えなのだろうか。
そんな僕をよそに千鳥は門の前に立った。そして「早く来なさい」といつもの口調で僕を促す。渋々歩いていくと「早く!」と怒鳴られてしまった。

「いい、これから言うことをよく聞いて。」

僕は黙ってうなずいた。

「この門の先・・・この塔の一階の部屋には中央に台座があるの。その台座には以前、勇者・アッシュ様が剣を抜かれた後があるわ。でもそれもつい先日の事だから、まだ最上階へのワープ機能は残されているはず・・・台座の上に立つだけで最上階に行けるはずよ。そこで、ドラゴンを倒してきなさい。」

僕は再び塔を見上げる。塔は変わることなく堂々としている。微かにだが、とても高い所で赤く何かが光っているのが分かる。何なのだろう・・・

「ねぇ・・・勿論、千鳥も来てくれるんだよね?」

開かれた門に足を踏み入れ、千鳥を背に今一番不安に思っていることを口にする。

「生きて戻ってきなさい。」

その一言と同時に閉じられてしまった。
部屋は真っ暗だ。千鳥は来ていない。僕、一人・・・僕・・・

「うわぁぁぁぁぁっ!!!まじかよっ!僕一人って!あけてよ千鳥!!」

閉じられた門を必死になって叩く。だが、手が痛くなるだけで空しい音が部屋に響く。僕は我を忘れて叫びながら門を叩き続けた。
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