AAA〜トリプルA〜

□第五話:僕と焔とお姉様
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【ドラグニア・ファーマル】
それは、誰からの侵略も受けることのない龍族が住まう聖なる土地。
限られたものしか立ち入ることが出来ない、伝説の地…


そう語ってくれたのは、焔だった。
とてもやさしく暖かい光に包まれた野原。空は綺麗なスカイブルー。ふんわりと体を包む風。
まるで【楽園】と言う言葉が似合う。いや、天国と言ってもいいのかもしれない。

大きな建物は見られず、控えめの小さな小屋があちらこちらにぽつんぽつんとあるだけだった。

僕は、それがあまりにも珍しい光景だったので、つい見惚れてしまっていた。僕の住んでいた世界の田舎と呼ばれるようなところでも、このような風景は見たことがない。
穏やかで、心が洗われるようだった。

そんな時間は束の間で、僕は焔に無言で腕を引っ張られた。

いきなりのことだったが、あまり強い力ではなかったので、その歩みに遅れることはなかった。

「どこへ行くの?」

そう焔に問いかけたが、「いけば分かる」と一言呟かれただけだった。これ以上聞いても、どうせ教えてはくれないのだろうと思い、僕もしゃべるのをやめた。まぁ、さきほどから、あまり口を開いてはいないのだけれど。

僕は、焔に連れられて一軒の少し大きめの小屋にたどり着いた。
そこは、少し高台に立てられており、下を一望できる。

所々に焔と同じような服装の様々な色の人たちが、のんびりとすごしていた。
僕は、そののどかな風景に心惹かれてしまっていた。

いつぶりだろうか、こんなに穏やかな気分になったのは。
いつも時間にせかされて生きてきた。もしかしたら、こんな気分になったのは生まれて初めてかもしれない。そう思っていた矢先だった…

「おぃ!!聞いているのかっ!!」
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