AAA〜トリプルA〜

□第四話:赤い竜と謎の青年と
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「ここからが大事。」

「ここから?」

「そう、ここから」

左近は「こほん」と一咳すると再び語りだした。

「それから500年の時が過ぎた頃、ゼヒカの元へ送ったはずのクロダの後継者と名乗るものが現れた。それは、封印されていたクロダの生まれ変わりだった。ここは魂が生まれ死んでゆく世界。500年の時を超えてクロダの魂が封印を破り、この世界へと舞い戻ってきたのだった。後継者は自身を【クロノス】と名乗った。クロノスにはクロダの記憶・知識さらには力までもを受け継いでいた。それゆえに、クロダの計画を妨害したゼヒカの存在を恐れていた。」

「クロダの生まれ変わりクロノスが現れた頃、対を成すゼヒカの生まれ変わりもこの世に存在した。彼女は自身を【ガイア】と名乗っていた。彼女もまた、ゼヒカの知識・力を受け継いでいたが記憶だけは曖昧で完全に受け継がれてはいなかった。ゼヒカの記憶からはクロダの存在がかき消されていて、なぜ自分が何のためにこの力を手にしているのか毎日疑問に思い過ごしていた。」

「そんなある日クロノスは、ガイアがゼヒカの生まれ変わりと知り、配下である魔族に彼女を捕らえるように命じた。クロダの記憶が抜け落ちているガイアは簡単に捕らえられ、クロノスの手中に落ちた。クロノスは、ガイアを処刑にはせず地下牢へと閉じ込めてしまった。クロノスに敵は居なくなった。恐れるものが無くなったクロノスは、魔族の地を訪れ易々と自分のものにした。魔族を誘惑し再びクロダが望んだ闇の世界の実現への一歩を踏み出したのだ。だがそれをドラゴンは見過ごさなかった。ゼヒカより生まれしドラゴンや精霊は亡くなっていたが、それらの子孫である種族は一致団結して、再び勇者探しへと向かっていった。」

「だが、クロノスはクロダの時のようにはいかなかった。現れた勇者候補を逆に利用し、各種族への復讐に使った。これにはドラゴンの子孫である竜族もただ見ているしかできなかった。そして、魔族の手は着実に世界を飲み込もうとし、クロノスの計画が順調に進んでいった。そして、現在に至る。一見して平和に見えるこの世界も、空に浮かぶ二つの月により監視され、影では犯罪等が耐えることなく続いている。」

話し終え一呼吸入れると左近は僕のほうへと振り返った。

「そして、次の勇者候補としてあなたが来たのです。」
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