小説

□王様だ〜れだ
1ページ/6ページ


「王様ゲーム、いえ〜い!!」
とある日の生徒会室。
一日の授業を終え、生徒会の仕事に追われていたルルーシュたち一同は、突然椅子から立ち上がった会長ことミレイに視線を向ける。
ルルーシュの瞳には「またか」という呆れが混じった眼差し。
「王様ゲーム?」
「突然どうしたんですか会長。」
ミレイの言葉の要点を鸚鵡返しするジノと、きょとんとした瞳で見上げるシャーリー。
いつの間に用意したのか、ミレイは自分の鞄からゴムでまとめられた生徒会メンバー分の棒を取り出す。
その先端にはそれぞれ1から7の数字とひとつだけ王冠の絵が描かれている。
また仕様もないことが否応なしに始まる…、とルルーシュの眉間に縦皺が一つきざまれる。
ルルーシュの心情を知ってか知らずか(いや多分あえての無視だろう)、ミレイは纏めていたゴムを外し、字と絵柄が書かれた先端部分を隠すように棒を差し出す。
「ということで、さあ皆!好きな棒を選びなさい!」
「誰もやるなんて一言もいってませんよ。だいたい説明もなしですか。」
「何よルルーシュ、王様ゲームなんてわざわざ説明しなくたって皆知ってるわよ。ねえ?」
最後の「ねえ」は皆に向けたもので、一同ははあ、と首を縦にふる。
 「その説明ではなくっ……。」
ルルーシュが軽い苛立ちを覚えながらゲームを阻止しようとするが、会長の笑顔でそれはもう無駄だと悟ると言葉を途中で切る。
古株メンバーは慣れたのか、邪魔にならないようにさっさと書類を片付ける。
どうせ止めたところで会長の提案が却下されることはない。それにシャーリーもリヴァルもなんだかんだで会長の奇行を楽しんでいる。ただ一人、ルルーシュを除いては。
そんなルルーシュをロロは隣席で心配そうに見つめる。
(「どうしよう、兄さんにもし何かあったら…」)
ロロの不安を余所に、ジノが面白そうに隣のスザクに話しかける。
「王様ゲームってあれだろ?王様が下僕にあんなことやそんなことさせるゲーム。」
「ジノ、なんか言い方がいかがわしいよ……。」
「その棒をひいて王様になった人がなんでもありな絶対の命令権を持つゲーム。」
貴族出身のジノとアーニャは誰から教わったのか、間違ってはないのだが説明が些か危ない。
書類をまとめ、ファイルに閉じ終えたアーニャは、赤に輝く瞳をミレイに向ける。
「それ、もうとっていいの?」
それ、とアーニャが指さしたのはミレイが先端を握って隠している棒だ。
ミレイはにんまりと笑顔を浮かべながら、棒を持っている手をアーニャに向ける。
「意外とアーニャもお祭り好きなのかしら?」
「………。」
アーニャは会長の言葉に無言を通し、くじをひく。
彼女がくじをひいたことで、雰囲気的に逃れることができなくなったルルーシュははあ、と心底嫌そうにため息をつく。そうして流れるように皆会長の手からくじをとっていく。
「王様だ〜れだ。」
陽気な会長の声が生徒会室に響く。
「あ、俺だ。」
するとはしゃいだようにリヴァルが、王冠が描かれた棒を皆に見せる。
「一番手はリヴァルか。さあかかってこ〜い!」
なんとも楽しそうなミレイである。何故仕事放棄しておいてこんなに暢気でいられるのだろうか。
ルルーシュは今日片付けるはずだった書類を横目に見ながら再度ため息をつく。
「ん〜……、じゃあレトロに、2番が5番にキスをする。」
リヴァルがいつもの悪戯な笑みを浮かべる。
ナイスだリヴァル、と何故かグッジョブポーズのミレイ。
「さあ2番と5番さんだ〜れだ。」
「あっ私だ。」
ジノが5とかかれたくじ番号を見せながら挙手する。
「じゃあ2番は……?」
私じゃない僕じゃないと未だ名乗りをあげない2番くじを探す。
すると自分のくじ棒を見つめたまま沈黙を続けるルルーシュに全員が気づくとミレイがルルーシュのくじを取り上げる。
「はい2番さんルルーシュぅ。」
きゃ〜とミレイとリヴァルが囃し立てる。
「おっ男同士だぞ!」
ルルーシュが抗議に声を荒げる。その顔は羞恥に赤く彩られている。
(「にっ兄さんの純潔がっ……!」)
(「ルルのキスっ!?」)
(「ルルーシュの唇っ……!!」)
ロロ、シャーリー、スザクの瞳が瞬時にあやしく煌めくが皆ルルーシュとミレイの会話に視線がいっているため誰も気づかない。
(「どうする、僕のギアスで兄さんのくじを誰かとすりかえて……いや、だめだ!兄さんのくじはすでに見られてる……っ、ああ兄さんっ!!」)
(「もしかしなくてもルルってこれがファーストキス!?じ、じゃあジノ君がルルのっ、のっ………!?」)
(「リヴァル後で絞めよう…」)
表情も露に内心でおろおろしているロロとシャーリーとは対象的に一人黒い眼差しとオーラを放つスザク。
こんな風に想われていることも知らず、ルルーシュはなんとか打開策がないかと言い訳を垂れる。
いい加減諦めの悪いルルーシュに疲れたミレイは絶妙な一言をルルーシュに向ける。
「ルルーシュ、貴方キスのひとつもできない男なの?」
その一言でルルーシュの中の何かに亀裂が走った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ