小説

□初めての人と、初めての人格。
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「よっしゃ行くか!」

「なんだっててめえはそんなに気楽な声出すんだァ?」

「銀時はいつもいつも…もっと士気の上がるような台詞を言えんのか。」

「戦に勝ったら女を買うぞ!とか?」

「「あほ」」


桂と高杉は銀時に同時に放った。
銀時は不満そうに唇をつんと尖らせた。

「んだよ、こんぐらいのがヤる気出んだろがよ。」
「どのやる気だ。ったく貴様は…。」


ぶちぶち言いながらも、遠くに聞こえた砲音に、皆が緊張する。

敵はもうすぐ近くに来るだろう。
しかも大砲を備えているとなると、奴らの戦闘力は桁違いに上がる。
犠牲者も多く出るだろう。


そう思いを馳せていた瞬間…

「銀時ィイ!危ねェ!」

高杉が叫び、俺が半分後ろを振り返った時、俺の視界いっぱいに血が見えた。
そして…


斬られた天人。


いつのまに忍び寄って来やがったんだ…?


「おー、無事で何よりじゃ。おんし、怪我はなか?うん、大丈夫そうじゃな!」

「あんたが…?」

「そうじゃ。わしは坂本辰馬。船が好きじゃきにこの戦が終わったら船乗りになりたいのう。」

人が聞いてもいないてめえの夢を語りだした長身の男。

「なあ、おんしらの名前はなんじゃ?」

「俺は坂田銀時。女が好きだから女乗りになりてえな。」
「俺は桂小太郎。俺は猫の肉球が好きだから猫に乗られたい。」
「…」

流れ的に次は高杉だが、高杉は自分からしゃべんなかった。
どうせ自分より遥かに高い身長を持つ坂本に何か苛立ちを感じているのだろう。

「悪ィな、こいつは高杉晋助。身長を伸ばしたい。」
「銀時!
俺ァ別に身長とか気にしてねーよ。」

「じゃあなんだよ」

そう言ったら今度はむしろ顔を少し赤くして黙った。


「銀時、高杉はな、本来自分が護るべき立場を坂本に取られたのが悔しかったんだろう。」


なんだ、

よっぽどかわいい理由じゃねーか。


初めての人と、
初めての人格。

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