小説
□扇風機争奪戦
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「あ〜〜〜〜」
暑い夏。いや、夏だから暑いのか。ジャンプを一通り読み終え、トイレに立った俺が、居間に戻ってみると神楽が扇風機の前に居座っていた。
「何やってんだ?まだまだガキだな、神楽も。」
神楽がやってるのは、誰もが一度はやったであろう、扇風機に向かって声を発するあれである。
「何言ってるアル!銀ちゃんだって本当はやりたいくせに。どうせ大人ぶりたくて余裕ぶってるだけネ!」
ガキ扱いされてムキになる神楽。どうも最近のガキはませたがる。意味がわからん。ま、神楽くらいの年はちょうどその頃合いか。
なんか反抗期とか思春期とか。
新八のやつもちょうど。
なんで難しい年頃のガキを二人も抱えなくちゃなんねーんだよ。
あー、暑いのにダルい。いや、暑いからダルい。
「とにかく神楽、暑いから扇風機の前からどけ。」
「嫌アル!銀ちゃんがクーラー買ってくれないのがいけないネ!」
「おめっ、そんな金あったらとっくに買ってるわ!とにかくそいつの首を寄越せ!」
俺は神楽を押し退け、扇風機ちゃんの頭を自分に向ける。
「子どもは風の子!扇風機の風の子ヨ!」
「ざけんな!外行って走り回って自分で作り出す風の子になりやがれ!」
「それじゃあ風の親になっちゃうアル!」
「もうなんでもいいからどけ!」
「銀ちゃんあっち行け!」
「うぬあ!」
「とるあ!」
バキッ
……
「こんにちはー…って、あんたらまた同じ展開やってたんスか?」
はあ…と新八のつくため息が、万事屋にやたら響いたある夏の午前。
「そんなこったろうと思って、カリカリくん買ってきましたよ。」
そう言って新八がコンビニのビニル袋を差し出した。
「…新八ィイイ!!お前はやればできる子だと思ってたぜ!」
「今度からダメガネじゃなくて、ブメガネネ!昇格おめでとうアル!」
「ブメガネってなんじゃぁああ!!」
いつものような騒がしさは、すぐに舞い戻ってきた。