小説
□二人きり
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「土方さん、いい加減観念してこれ着て下せェよ。」
そう言って総悟が俺に差し出したのは隊服の袖を切り落とした総悟曰く『ロッカーになれる』服。
それぐらいでなれるなら楽器は必要が無い。
「いい加減にしろ。誰が着るか。」
「もうみんな着てますぜ?着てねーのはアンタだけでさァ。」
「オメェもだろうがよっ!」
俺はそこまで言ってから気付く。
総悟は毎年この季節になると、機嫌がいい。
普段、絶対起こり得ないことだし、こいつは素直にそんなことはしない。況してや俺もしない。
ああ、こんなにも馬鹿げているのに愛しいと思うなんて、だいぶ俺もイカれてるみたいだ。
ペアルック
二人きりで同じ格好をして歩くだけで、俺たちはまた、感情を募らせる。