小説

□重み
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眠いのに眠れない。
明日、いや、今日はもうすぐ明けてしまう。
空が白み始めた。
別に何を考えるでもない、寝たくないわけでもない。
早く意識を手放したい。
それでも眠れないのはなぜだろう。

俺は布団を握り締めた。

それでもその答えが出るわけではない。
早く、早く解放してくれ。
でないと俺はどうにかなっちまいそうだ。

まだ寒い頃合いなのに、俺は全身汗をかいていた。羽毛布団がいけないんだ。

いったん掛け布団を足で蹴り上げ、剥ぐ。
しかし、掛かっていなければいないで逆に寒さすら感じてしまう。

喉渇いた。

俺は一旦水を飲みに台所まで行った。
蛇口をひねり、コップに水を半分満たし、口を付けた。
水道水は別に旨かないが、ミネラルウォーターを買うほど我が家は裕福でないのだから仕方ない。


「ぎんちゃん…?」

「うおっ!」

いつの間にやら、神楽が背後に立っていた。
今起きましたよとばかりに眠そうな顔をして目を擦っている。

「悪い、起こしちまったか。」

神楽は眠いためか、聞こえているのかいないのかわからない眠そうな顔のままだった。

「ぎんちゃ…うでまくら」

「は?ってオイ!」


神楽が腕枕などと言い出した…よね?
聞き直そうとすれば途中で立ち寝に入ってしまったようで、倒れかけたのを掬った。

仕方なく抱き抱え、押し入れに戻そうとした。
………………

離れない。

神楽はキツく俺の寝巻きの袖を掴んでいた。
腕枕…してやるか、どうせ眠れないのだ。

神楽を俺の布団に降ろしつつ、俺も横たわった。

重い。

少女の頭一個だけで、こんなにも重いものなのかと初めて知った。
腕も痺れてきた。

だが、その重さが、痺れが、とても心地良かった。


あんなにも手放せなかった意識が、遠退いて行くのを感じた。


ああ良かった。

あった。




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