小説
□大人
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「銀ちゃん」
「ああ?」
「私を大人にして欲しいアル。」
「ああ、勝手にしろ、勝手に…って、は?」
定春の散歩から帰ってきた神楽から変なことを聞いた。
大人にして欲しいってどういうことだよ、いやいやいや、違う違う!
きっと聞き間違えだ。
「あのー、神楽ちゃん…?今なんて言った?」
「私を大人にしろヨ。」
……ノォオオオ!
「神楽チャン?大人ヲカラカッチャダメ!」
「何で銀ちゃん変なしゃべり方アルか?」
「だってお前…ハァ?」
再び立ちっぱなしの神楽を見る。
よくよく見れば、こいつ…かわいくね?
大きなくりくりした瞳が真っ直ぐに俺を見ている。
つい下に視線が移ってしまえば、チャイナ服のスリットからのぞく白い生足が艶かしい…ように見える気がしなくもない。
…俺、頭おかしくなっちゃった?
「銀ちゃん…早くしてヨ。」
かか、神楽ぁあ?!
よく見てみれば、モジモジしているように見える…気がしなくもない。
「じゃあ…あれ…ちょっと目閉じろ。」
いいのか、俺。
バレたらハゲに殺されるだろうなあ…。
まあ、いざとなったらハゲと闘って愛を勝ち取るってか?
俺はそっと神楽を抱き上げ
「どこ触ってるアル!」
「ヘブシッ!」
いきなり食らったのは蹴り。
「え、ちょっと、神楽、何?」
「いきなりボディタッチなんてキショイアル!私は大人にしてって言ったアルよ!」
「だーかーら!大人にしてやろうと思ったんだろが!」
「それで何でボディタッチになるネ!大人に大人にしてって言えばしてくれる言ってたアル!」
「はあ?!それ誰から聞いたんだよ!」
なんだか知らないが、熱い口論になった。そして誰から聞いたかを聞いた途端黙る神楽。
「…サド」
「はあ?!」
「あ、あいつが!私を馬鹿にして…!去り際にそう言って…。」
「…で、それを信じたわけ?」
神楽は下を向いて唇を噛んだ。それがまた妙に色っぽく見える…ような気がしなくもない。
「騙された…っていうことアルか?」
「ああ、そうだよ。ったく、あのくそガキは…。」
「銀ちゃんごめんアル…」
しょんぼりした神楽は、押し入れに籠ってしまった。きっと沖田くんに騙されたのが余程ショックだったのだろう。
「ただいまー」
新八が買い物から帰ってきた。もう大丈夫だ、新八がいる限り変な気は起こせない。
「ほんと、やられたよ…」
あのくそガキ…
もう神楽がただのガキには見えない。
「どうしたんですか?銀さん。」
「あ?今思春期のガキ。」