小説

□大人
1ページ/1ページ



「銀ちゃん」

「ああ?」

「私を大人にして欲しいアル。」

「ああ、勝手にしろ、勝手に…って、は?」

定春の散歩から帰ってきた神楽から変なことを聞いた。

大人にして欲しいってどういうことだよ、いやいやいや、違う違う!
きっと聞き間違えだ。

「あのー、神楽ちゃん…?今なんて言った?」
「私を大人にしろヨ。」


……ノォオオオ!


「神楽チャン?大人ヲカラカッチャダメ!」

「何で銀ちゃん変なしゃべり方アルか?」

「だってお前…ハァ?」


再び立ちっぱなしの神楽を見る。
よくよく見れば、こいつ…かわいくね?
大きなくりくりした瞳が真っ直ぐに俺を見ている。

つい下に視線が移ってしまえば、チャイナ服のスリットからのぞく白い生足が艶かしい…ように見える気がしなくもない。


…俺、頭おかしくなっちゃった?


「銀ちゃん…早くしてヨ。」



かか、神楽ぁあ?!


よく見てみれば、モジモジしているように見える…気がしなくもない。


「じゃあ…あれ…ちょっと目閉じろ。」


いいのか、俺。
バレたらハゲに殺されるだろうなあ…。
まあ、いざとなったらハゲと闘って愛を勝ち取るってか?


俺はそっと神楽を抱き上げ
「どこ触ってるアル!」

「ヘブシッ!」


いきなり食らったのは蹴り。

「え、ちょっと、神楽、何?」

「いきなりボディタッチなんてキショイアル!私は大人にしてって言ったアルよ!」

「だーかーら!大人にしてやろうと思ったんだろが!」

「それで何でボディタッチになるネ!大人に大人にしてって言えばしてくれる言ってたアル!」

「はあ?!それ誰から聞いたんだよ!」


なんだか知らないが、熱い口論になった。そして誰から聞いたかを聞いた途端黙る神楽。


「…サド」

「はあ?!」

「あ、あいつが!私を馬鹿にして…!去り際にそう言って…。」

「…で、それを信じたわけ?」

神楽は下を向いて唇を噛んだ。それがまた妙に色っぽく見える…ような気がしなくもない。


「騙された…っていうことアルか?」

「ああ、そうだよ。ったく、あのくそガキは…。」


「銀ちゃんごめんアル…」

しょんぼりした神楽は、押し入れに籠ってしまった。きっと沖田くんに騙されたのが余程ショックだったのだろう。

「ただいまー」


新八が買い物から帰ってきた。もう大丈夫だ、新八がいる限り変な気は起こせない。


「ほんと、やられたよ…」



あのくそガキ…

もう神楽がただのガキには見えない。



「どうしたんですか?銀さん。」

「あ?今思春期のガキ。」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ