小説
□甘いモノ
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「いいなあ…おまえの髪の毛。やっぱりヅラなんじゃねえの?」
「ヅラじゃない!地毛だ!」
何度このやりとりを繰り返しただろうか。
いい加減にしてほしい。
今俺は銀時の家で茶をしていた。というか攘夷勧誘に来ていた。という名の様子見に来ていた。
「なあ、ヅラ」
「ヅラじゃない、桂だ」
俺が再びそう返すと銀時は黙った。かと思うと俺が座るソファーの後ろに回り、俺の髪の毛を弄び始めた。
「いいなあ…俺もストレートになりたかったなあ…。ロン毛にはなりたくねえけど。」
いつもストレートへの憧れを口にする銀時。
しかし、最後の言葉が気になった。
「切った方が…いいか?」
俺が聞くと銀時は目を見開いた。
「は?」
「は?は無いだろう。銀時がロン毛は嫌だと言ったんだろうが。」
俺がそう言えば銀時は納得したように頷いた。
「それは俺の話。おまえはこれの方がいいだろ?ほら、こうやって指に絡めやすい」
「やめんか、そういうことは仲睦まじい男女がすることだ。男同士で気持ち悪い。」
俺が言い放った言葉に銀時の指が固まった。
「気持ち悪いっておまえ…え?っつか別にいいだろ。おまえが女になればいいだろ?」
「銀時、おまえは心まで軟弱に成り下がっ」
半分後ろを向いてお説教モードに入ろうとしたができなかった。
中断された。
「貴様のようなっ甘いモノを口にすると落ちぶれそうだ…。」
「もう十分に俺に落ちてんだろ?」
にやっと笑った銀時に、不覚にも心の臓が速まったのは秘密だ。
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己を保とうとする桂さんに銀さんがそれを崩壊に向かわせているといいと思う。