小説
□化粧
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「銀ちゃん」
「ああー?」
「私、け、化粧してみたいアル!」
「ブッ!」
昼間のジャンプタイム。
いきなり神楽が言い出したことに俺は新八の入れてくれた茶を吹き出した。
「おまっ、ガキにはまだはえーだろ。」
「だって最近の子はみんな化粧してるアル…。テレビで言ってたヨ。」
確かに神楽が言うように、最近のガキどもは無駄に外面ばかりどうにかしようとする。
「おまえそんなに自分がブスだと思ってんの?」
「んなわけないネ。私は元からパーフェクトヨ。だけどさらに極めてみたいアル。」
「化粧なんてしたってしょうがねーことぐらい下のババア見りゃわかんだろ?無駄だよ、無駄。」
そもそも若い頃から化粧をすると逆に肌が痛むと聞く。そこまでしてするもんでないと俺は思っている。
「銀さん、やらしてあげたらどうですか?なんなら僕、姉上に頼んでみましょうか?」
「ばっかオメエ、おまえん家の姉ちゃんだってそこまで化粧とか好きそうじゃねーだろ。それに…」
「なんすか?」
躊躇われるが、ハッキリと言ってしまえば、
「俺だって持ってるぜ。」
その瞬間、二人は1メートル退いた。
「ほらよ」
机の引き出しにしまっていたのはあの化け物のところでパー子をやって、解放された後、なぜかもらった化粧道具一式。しかも未開封である。
「神楽、おまえにやる。俺が使うわけもねーし。」
「ほ、本当にいいアルか?!」
目を輝かせる神楽。
「でもな…」
一言言っとかないといけない。
「おまえはそれ以上どうにもなんねーと思うけどな。」
「なんだと!この天パ!私は何したって無駄って言いたいアルか?!」
「神楽ちゃん!違うよ」
どうやら新八のやつはわかったようなので俺は照れ隠しで外に出ることにした。
(神楽ちゃんは今で十分にかわいいってことでしょ)
(言い方が遠回し過ぎネ)
結局神楽ちゃんが銀さんにもらった化粧道具を使うことはなく、いつまでも神楽ちゃんの部屋に置きっぱなしになっていた。
∵∴∵∴∵∴∵∴∵
素直じゃない銀さんの照れ隠し。