小説
□夕日努力賞
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夕日が目に染みる。
結局今日は仕事は見つからなかった。
しかし褒めてほしい。
今日1日ジャンプを読む間も惜しんで歩いたことを。
ふと、道端に光るものを見つけた。
!
「ラッキー!500円じゃん!」
滅多にありつけない500円を見つけた俺は、急いでそれを拾った。
しかし今日はそれを懐に入れる気分になれなかった。
この金も俺がこうして懸命に仕事を探すように、誰かが働いて得たお金。
いつもは気にせず頂くのだが、やはり今日は体調が悪いのかもしれない。
俺はそんな一枚の銭のために交番に行った。
「あ」
その時交番にいた男の子が声をあげた。
「それ僕の!」
その男の子は嬉々としてその金を持って行った。
「あ、一応住所書いてってください。」
交番のおっさんにそう言われダルいながらも書いて帰った。
元はパチンコに行こうと握った小銭を持って、俺はスーパーに寄った。
『あ、またそんなにチョコレート買って!』
『ズルいアル!酢昆布買えヨ!』
1人なのにいつものような声が聞こえてくる。
(そうだ、たまには肉を)
安売りの豚バラ肉を1パック掴んだ。下手な野菜を買うより安い。たまには野菜と肉のコラボを楽しみたいものだが、どちらかしか買えないのが常。
俺のありったけの金で買えるのがこれだけって…馬鹿らしい。
さあ、一体あいつらはどんな顔をするんだろうか。
「けーったぞー。」
いきなりドタドタと新八が玄関に来た。
「銀さん!どこ行ってたんですか!さっき500円玉を届けてもらったっていう男の子のお母さんが…。」
そう言う新八について台所に行くと野菜野菜。たくさんの野菜があった。
「新八、じゃあこいつもよろしく」
俺はさっき買ってきた肉を新八に渡した。
「銀さっ、これ!」
「おまえら成長期なんだからいっぱい食わなくちゃいけねーぜ」
「銀さん…大丈夫ですか?」
「大丈夫に決まってん…だ、ろ…」
なぜだか視界が霞み、身体が傾くのを感じた。
「か、神楽ちゃん!布団用意して!」
「やっぱり体調悪かったネ。」
「おかしいと思いましたよ。」
((でも…ありがとう))
∵∴∵∴∵∴∵∴
ひっそりと感謝。でも口には出さない。