ゆめ

□虚言癖のある人
1ページ/1ページ

※狂愛…気味?(聞くな)










「今日は雨らしいぜよ」

「今日は晴れだね」

「次の数学は自習になるらしいぜよ」

「今日も数学の授業ダルいな」

「その飴玉、りんご味じゃよ」

「赤いからいちご味かな」

「俺はお前さんが好きじゃよ」

「私は仁王が嫌い」

「のぅ、どうやったらお前さんは俺を信じるんじゃ」

「ねぇ、私はどうしたら仁王を信じれるかな」









たまに仁王は私に「好きだ」と言う

けれど私は仁王の言う事を一つだって信じれない

仁王は最近まで私の親友と付き合っていた
私は親友を通して仁王と知り合った


まるで永遠の愛を誓い合ったかの様に幸せそうだった親友と仁王は、ある日突然別れた

親友は泣きながら私に言った

「雅治はあんたの事が好きになったんだってさ」

それ以来親友は親友ではなくなってしまった
私は大切な友人を失った
代わりに得たのは詐欺師と呼ばれる男からの求愛だ


「俺の事、恨んどるんか」

「別に、どうでもいいよ仁王の事なんて」


嘘、本当は恨んでる
仁王さえ変な気まぐれを起こさなければ私は今頃親友と放課後の予定を和気藹々と立てていた筈だ

けど私の隣には誰もいない

孤独な自分を見られたくなくてこうやって昼休みには誰もいない予備教室に来る
けれどいつもそこには仁王がついてくる


私は仁王が憎い
私と親友を引き離したから
私は仁王が信じられない
私の親友を裏切ったから


「お前さん、寂しくはないんか」

「誰のせいだと思ってんの」

「ほれ、やっぱり恨んどるじゃろ」

「何、私に恨まれたいの」

「あぁ、恨まれたい」

「変人」

私がそう蔑むと仁王はハハハハッと笑った

「そうじゃ、変人じゃ、じゃけど」

そう言って仁王は私が腰掛けている椅子の前の机に両手をついて、ずい、と顔を近付けてきた

「お前さんも、相当な変人じゃろ」

「な、に…!あんたなんかと一緒にしないでよ!!」

「じゃあ、聞かせてもらうが、」

どうしてだろう
こめかみから汗がじわじわと出てくる感覚がする
心臓がうるさい
仁王から目が、離せない

「なぜ俺から逃げん?
俺の言葉を信じないとは言うが、俺の話はしっかり聞く
俺を恨んどるくせに、ひっぱたく事も文句を言う事も、睨む事すらせん」

こめかみから汗がつーっと伝った気がした
体が冷たい、全身から血の気が引いていく
なのに体の芯が燃える様に熱い、体が焦げ付きそうだ

「俺は、お前さんの事が好きじゃ」

「私は…嫌い」

「お前さんは、俺の事が好きじゃ」

「私は、仁王が、嫌い」

脳がオーバーヒートして溶け出しそうだ
私は仁王が嫌いだ、嫌いだ、嫌いだ


仁王は不適に笑う
その目は心底この状況を楽しんでいる様だけれど、どこか真っ直ぐだ
その視線が、私の脳を溶かす


「お前さんは、俺の事が好きじゃ」

「私は…」

「黙っちょれ」

「お前さんは、俺の事が好きじゃ、だがそれを認めて裏切り者になるのを恐れてるだけじゃ」

「ちが…う…嘘吐き…」

「違っとらん、嘘吐きはお前さんじゃろ」

もうまともに思考出来ない
脳は溶けてなくなってしまった


「独りが嫌なら俺が隣に居てやるけぇ、そろそろ正直に俺に愛されんしゃい」


ここにいるのは私じゃない
私はもうさっき溶けてなくなってしまった







「私、は…」

「仁王が好き」








溶けだした脳が透明の雫となって頬を伝い落ちた

仁王は嬉しそうに笑ってその<私>だった雫を舐め取った










虚言癖のある人
それは私

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ