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□5メートル
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 地理で自習。
 
 一体何を...。
 
 
 半分程を自習に費やした頃、クラサメは戻ってきた。
 
 
 マスクをしていて表情を窺うのは難しいが、何だか機嫌がよく思えるのは、オレの気のせいか?
 
 
「ね、なんか隊長機嫌よくなってない?」
 
 
 隣に座るレムに袖をひかれ、こそりと告げられる。
 
 思っているのはオレだけじゃないみたいだ。
 
 
「オレもそう思う」
 
「やっぱり、副長をイジめたから機嫌よくなったのよ!」
 
「レム」
 
 
 しーっと声を潜めるように促すと、慌てたように手を口元に当てた。
 
 
「由々しき問題だわ。これはみんなで一致団結して取り組むべきよ」
 
 
 机の上で小さく両拳を握るレムの鼻息は荒い。
 
 
「あんまり興奮するなよ」
 
「ありがとマキナ」
 
 
 行動力はあるのだが、いかんせん身体が付いていかない。
 
 身体が弱いのに、0組に編入なんて。
 
 
 オレが、見ていてやらないと。
 
 
 目下、レムの視線の先の二人だよな。
 
 
「一致団結はいいとして、具体的な案が欲しいよな」
 
 
 広げていたルブルムの地図を眺める。
 
 
「マキナ君。いつから私たち、街の名前になったのかな?」
 
「副長。...うわっ」
 
 
 マクタイに隣接して、いつの間にかクラサメ、〇〇という新都市が出来ていた。
 
 
「す、すいません」
 
 
 慌てて消す。
 
 
「街の名前になるくらい、偉業は達していないよ。...でもちょっと嬉しいかも」
 
 
 へへと笑う副長は、本当に歳の差を感じさせない親近感を抱く。
 
 
 この人をイジめる、隊長。
 
 確かに、なんとかしてやりたい。
 
 
 視線を教壇へ移すと、クラサメもこちらを見ていたようで、一瞬だけ目が合った。
 
 副長が去った頃、またレムに袖を引かれる。
 
 
「私に、いい考えがあるの」
 
 
 ごそごそとかばんから取り出したのは紙コップ。
 
 
「ね、ナイスアイディアでしょ?」
 
 
 それはともかく...。
 
 
「なんでそんなものがかばんに入ってるんだ?」
 
 
 ヒミツ、と笑ったレムは、マキナに手伝ってもらい、こそこそと作製を始めた。
 
 
 
 
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