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□零距離
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小さなかばんに必要分な道具だけを入れて、〇〇はエントランスの魔法陣を前に立ち止まっていた。
果たし状に近い告白をぶつけられ、返事は保留のまま半年ほど経過。
ついに催促を受けた〇〇が後ろ向きながらも承諾を返し、晴れて二人が恋仲となったのはつい先日。
〇〇・##NAME2##。
クラサメ・スサヤ。
二人はいわゆる彼氏彼女となったわけで。
...わけだが。
〇〇の顔は晴れない。
自然とため息が漏れる。
嫌いじゃない。決してクラサメの事が嫌いなわけではない。
ただ、照れ臭いというかなんというか。
どうしても二人きりなるのを避け続けてしまう。
我ながらいかがかと思うような小さい用事を入れまくり、声を掛けようとしているクラサメを意図的に無視する事、6日。
そろそろ、切れそうな気配がする。
まだ0組の教壇に立って日は浅いが、放つ冷気は日に日に増している。
ジャックやケイトがぎゃんぎゃん鳴き、ナインが噛み付く頻度も増えた。
あれでは歩み寄りも何もあったものではない。
橋渡しをするのが自分の役目ではないのか。
〇〇は頭を振った。
今日呼ばれたのは作業があるからだ。
暇か、と部屋に誘われたわけではない。
業務業務。仕事仕事。
大丈夫。二人きりなわけではないのだし。
思考を切り替えて足を踏み出したそのとき。
魔法陣が起動して、まさに今クラサメの部屋にいるはずの見知った二人を吐き出した。