二十歳の誕生日に貰ったネックレス。約三年前。 「お気に入りだよー。デザインもだけど、おふろも大丈夫だから外さなくていいんだよねー」 毎回外すとそのうち面倒になって着けなくなる。 そんなずぼらな性格までしっかり見抜かれている。きっとそれを考慮した上でのプレゼント。 「お前…、この前まで彼氏いたんじゃなかったのか」 こないだフラれちゃったケド。からりと笑った。 「友達にもらったモノだもんー」 〇〇ってさ、クラサメといるときのが楽しそうだよな。 そう言われた。 怒鳴り合いばっかだけど楽しいよ。 「トモダチ、ね」 そうだよ。大事な友達だよ。 クラサメは煩わしく思ってるかもしれないけど、私にとっては大事な友達。 あれだけ怒鳴り合えるのって、なかなかいないでしょ? だが恋人にそれを言ってもなかなか理解は得難い。 そういうんじゃ、ないんだってば。 クラサメの視線を感じて左右に揺らしていた頭を止める。 指先で探ると、触れたのは小さな掻き傷。 「まだある〜?なかなか治んないなー」 自分で引っ掻いた覚えはないから、恐らく最後にしたときに付いてしまった跡だ。 撫でていると。 「ぃッ!ヤバッひっかいた!」 爪が引っ掛かってしまった。 かさぶたが剥がれた感覚がある。 「血、が」 「うそッシャツにつくっ!」 ティッシュ!と立ち上がろうとすると、腰に回された腕に力がこもり引き止められた。 「ちょックラサメ」 「舐めてやるよ」 「ふえッ?ぃ、いいって」 「動くな」 いいからティッシュ取りに行かせてよ。 掻き傷に唇を寄せ、血を吸い上げるクラサメ。 「ク、ラサメ、ぃいってば」 「肩竦めんな」 シャツに付くぞ。 そう言って腰に回していた手を外し、頭を反らせる。 「ぃ、たッ、だからいいって!ティッシュ!」 「俺がいいって言ってるんだ」 髪邪魔。と言ってサイドに払われた。 ヘアピン外したのあんたでしょーが! 思うが、かき上げた際にクラサメの手が首に触れ、肩を竦めてしまった。 「こっちにもある」 掻き傷から逸れて首筋にも吸い付く。 んなトコにッ、あるわけないッ! だがくすぐったくて上手く言葉にならない。 「も、ぅ、止まったでしょ」 「動くから全然止まらない」 シャツを引っ張り背中にも吸い付く。 「そんなトコに、ない、ょッ」 「あると言ったらある」 こっちにも。 ああ。こっちにも。 どれだけ引っ掻き傷だらけなのよ私!! 突っ込もうとしたときに。 「ひ、ぁンッ」 首筋を吸い上げられた。 「ク、ラサメ、も、ぃぃ」 「今日はなんの日だ」 今日、は。クラサメの。 「たん、じょぅ、び」 「そうだ。俺の言う事を聞く日だったな」 言うコト聞く日だってか!?ここで職権濫用!? 「ゃ、めて、ください」 くそ、屈辱だ。 だが。 「トモダチが傷の手当してるだけだろ」 クラサメは止まらなかった。 「クラ、サメ、酔ってるの?」 そういえばさっきお酌した気がする。 「酔ってない」 ですよね!!酔っ払いはみんなそう言うのよ!知ってるわよ! 「ゃ、めて、ゃだ」 「借り物のシャツなんだろ。血が付かないようにしてるだけだ。治療ぐらいおとなしくされろ」 トモダチの。 言ってうなじに吸い付く。 「んンッ」 なんだろ…お酒のせい?風邪っぽいから? 変だ。 私、なんか変だ。 |