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□Please yourself side-0
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 二十歳の誕生日に貰ったネックレス。約三年前。


「お気に入りだよー。デザインもだけど、おふろも大丈夫だから外さなくていいんだよねー」


 毎回外すとそのうち面倒になって着けなくなる。

 そんなずぼらな性格までしっかり見抜かれている。きっとそれを考慮した上でのプレゼント。


「お前…、この前まで彼氏いたんじゃなかったのか」


 こないだフラれちゃったケド。からりと笑った。


「友達にもらったモノだもんー」


 〇〇ってさ、クラサメといるときのが楽しそうだよな。


 そう言われた。


 怒鳴り合いばっかだけど楽しいよ。


「トモダチ、ね」


 そうだよ。大事な友達だよ。

 クラサメは煩わしく思ってるかもしれないけど、私にとっては大事な友達。

 あれだけ怒鳴り合えるのって、なかなかいないでしょ?


 だが恋人にそれを言ってもなかなか理解は得難い。

 そういうんじゃ、ないんだってば。


 クラサメの視線を感じて左右に揺らしていた頭を止める。

 指先で探ると、触れたのは小さな掻き傷。


「まだある〜?なかなか治んないなー」


 自分で引っ掻いた覚えはないから、恐らく最後にしたときに付いてしまった跡だ。

 撫でていると。

 
「ぃッ!ヤバッひっかいた!」


 爪が引っ掛かってしまった。


 かさぶたが剥がれた感覚がある。

 
「血、が」

「うそッシャツにつくっ!」
 

 ティッシュ!と立ち上がろうとすると、腰に回された腕に力がこもり引き止められた。


「ちょックラサメ」

「舐めてやるよ」

「ふえッ?ぃ、いいって」

「動くな」

 
 いいからティッシュ取りに行かせてよ。


 掻き傷に唇を寄せ、血を吸い上げるクラサメ。


「ク、ラサメ、ぃいってば」

「肩竦めんな」


 シャツに付くぞ。

 そう言って腰に回していた手を外し、頭を反らせる。


「ぃ、たッ、だからいいって!ティッシュ!」

「俺がいいって言ってるんだ」


 髪邪魔。と言ってサイドに払われた。

 ヘアピン外したのあんたでしょーが!

 
 思うが、かき上げた際にクラサメの手が首に触れ、肩を竦めてしまった。


「こっちにもある」


 掻き傷から逸れて首筋にも吸い付く。

 んなトコにッ、あるわけないッ!

 だがくすぐったくて上手く言葉にならない。


「も、ぅ、止まったでしょ」

「動くから全然止まらない」


 シャツを引っ張り背中にも吸い付く。


「そんなトコに、ない、ょッ」

「あると言ったらある」


 こっちにも。

 ああ。こっちにも。


 どれだけ引っ掻き傷だらけなのよ私!!


 突っ込もうとしたときに。


「ひ、ぁンッ」


 首筋を吸い上げられた。


「ク、ラサメ、も、ぃぃ」

「今日はなんの日だ」


 今日、は。クラサメの。


「たん、じょぅ、び」

「そうだ。俺の言う事を聞く日だったな」


 言うコト聞く日だってか!?ここで職権濫用!?


「ゃ、めて、ください」


 くそ、屈辱だ。


 だが。


「トモダチが傷の手当してるだけだろ」


 クラサメは止まらなかった。


「クラ、サメ、酔ってるの?」


 そういえばさっきお酌した気がする。


「酔ってない」


 ですよね!!酔っ払いはみんなそう言うのよ!知ってるわよ!


「ゃ、めて、ゃだ」

「借り物のシャツなんだろ。血が付かないようにしてるだけだ。治療ぐらいおとなしくされろ」


 トモダチの。

 言ってうなじに吸い付く。


「んンッ」


 なんだろ…お酒のせい?風邪っぽいから?


 変だ。


 私、なんか変だ。



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