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□A tea break
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「〇〇、時間あるか」
 
 
 言い淀みながらクラサメに声を掛けられたのは、麗らかな陽射しが降り注ぐ午後。
 
 
 中休みを友達とテラスで過ごしていた〇〇だったが、ちょっとごめんねと言葉を残してクラサメの元に駆け寄る。
 
 
「この後の予定は?」
 
「講義補佐が2コマ。あとカオンさんに呼ばれてる」
 
 
 そうか、と呟いたクラサメは思案するように口元に手を添えた。
 
 聞かれるままに明日と明後日の予定も話す。
 
 
「何よ。今じゃダメなの?」
 
 
 言葉の歯切れが悪い。〇〇の予定がクラサメにどう影響するというのか。
 
 
「今日カオンさんに会ってからは、明日の午後まで予定がないんだな」
 
 
 念を押すクラサメに、〇〇は怪訝な表情を浮かべながらも頷く。
 
 
「だから。何。」
 
「今日の夜、予定くれないか」
 
「は?」
 
 
 なんか恥ずかしい事を言われた気がする。
 
 
「な、何よ。何の用?言いたいコトがあるなら今」
 
「何の用かも、言いたい事も、今日の夜だ。二〇〇〇に...そうだな、鐘楼で待ってる」
 
 
 それだけ言ってクラサメは踵を返し、魔法陣へ消えた。
 
 
「なになに。何の用だったの?」
 
「...わかんない」
 
 
 首を捻りながら友達の元に戻った〇〇はさっそく責っ付かれる。
 
 
「わかんないって何よ〜」
 
 
 要領を得ない返答に、ぷくっと頬を膨らませた友達は、膝に広げていたサンドイッチにかじりついた。
 
 
「なんか...予定聞かれて、今日の夜に約束取り付けられた」
 
「告白!?」
 
 
 むせながら言われた言葉に〇〇もむせる。
 
 
「ナイって!ありえないって!」
 
「キャーっ!ありえなくないでしょ!キャーっっ!」
 
 
 人がいる昼日中の今ではなく、人目を避けた夜。
 
 明日の午前はオフ。
 
 躊躇いがちに取り付けられた約束。
 
 
「〇〇、顔真っ赤」
 
「あぅう」
 
 
 頬に手を当てるが自分でも熱を帯びているのがわかる。
 
 
 そんなまさか。
 
 
 そんな馬鹿な。
 
 
 はしゃぐ友達の横で、〇〇は味が感じられなくなった食事を再開した。
 
 
 
 
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