終礼の鐘が鳴り響き、途端に大講義堂が騒がしくなった。 返されたレポートをカバンに仕舞いながら〇〇も席を立つ。 「やあ〇〇ちゃん。ランチの相手、決まってる?一緒にどう?」 「うん。いいよ」 声を掛けて来たカヅサにお昼をどうしようか迷っていた〇〇は二つ返事をした。 「でも混んでないかな?」 全訓練生が一同に授業を終えた。 我先にと扉へ向かう生徒も大勢だ。これから昼休みに入る。 「だろうね。だから部屋にケータリングを頼むつもり」 「そんなコト出来るんだ?」 知らなかったの?と首を傾けたカヅサの前髪が目に掛かった。 オリエンテーションの施設説明一環で知らされていたらしい。 授業態度は勤勉な方だが覚えていない。 何してたんだろう。 「他にも声を掛けてあるんだ。多めに頼むから他にも誘っていいよ」 「わかった。ルームメート誘ってみるね」 それじゃあ後で部屋に来て。 ひらりと手を振ってカヅサは猫のような身のこなしで大講義堂を去っていった。 あてがわれている寮の自室に帰ってきた〇〇がカードの裏を見ながらナンバーを入力すると、軽い電子音が鳴りクリアランプが点灯してロックが解除される。 「おっかえりーぃ」 ドアを開けると声を掛けられた事に少し驚いた。 「あれ、居たの?」 「悪いー?」 ノックをしても返事がなかったため居ないと思っていたのだ。 「こっちから開けるの手間じゃんか。早くナンバー空で言えるように覚えなよ」 確かにそうなんだが。 それでもノックをしてしまう。 最初は開けてくれていたが、ルームメイトであるアリィがだんだんノック反応が鈍くなったのは〇〇のせいだった。 「そうだ。お昼どうするの?カヅサ君に誘われたんだけど、一緒にどう?」 「ごめーん。席とっといてもらってんだ」 顔の前で手を拝み、入れ違いでドアへ向かうアリィ。 「そっか。わかった。気にしないで」 〇〇もベッドにカバンを置きに戻っただけだ。 連れ立って廊下に出る。 「次の講義、なんだろうね?」 知ってる?と視線を向けると、アリィは肩をすかして頭の後ろで手を組んだ。 「さあねー。手ぶらで、ってぐらいだからやっと実践演習?」 入学を果たしてから今まで、実践的な演習はおろか模擬訓練もまだ行っていない。 フィールドワークが数回あったが、それも模擬の模擬程度だ。 「でも訓練生全員だよね?」 集団演習にしては人数が多過ぎる。 首を傾げる〇〇にアリィはチッチッチッと指を振った。 「だから、あのアルファベット」 「なるほど!」 返されたレポートの隅に評価とは別のアルファベットが振られてあり、確認するよう教官から指示が出ていた。 組分けの記号なのかもしれない。 「アリィは何だった?」 「E」 残念ながら一緒ではなかった。 「昼休み挟んだのも同じ記号の人見つけとけってコトかもね。あ。おーい!」 魔法陣の前にいた二人組の男子に声を掛ける。 どうやらランチを一緒に取る生徒たちらしく、手を上げ返してアリィを待っている。 「じゃあ〇〇、後でね」 「うん、後でね」 手を振りアリィを見送った〇〇も、カヅサの部屋へと向かった。 |