「エミナ、アイツになんて言ったんだ」 ん?と返事をする隣の人物は場内を見回したままだ。 「ある事無い事吹き込んだんだろ。いい加減教えてくれないか」 「嘘、まだ口聞いてくれてないの?」 大きな目を更に見開いてこちらを見る。 「…まあな」 正しくは四天王に〇〇を加えての飲み会でヘマをしたのが加算されるのだが、敢えてそこは伏せておく。 「そんなに尾を引くとは思わなかったわ…。ごめんクラサメ君」 「…いいけど」 エミナと別れたのが約半年前。 それから例の飲み会で少し会話をしたきり、事務的な会話以外はしていない。 「変なコトは言ってないんだけどな。クラサメ君のバカって言ってみたり、ちょっとだけ泣いてみたり?それくらいよ?」 「それか…」 クラサメは溜め息を付いた。 エミナ至上主義の〇〇だ。 バカって事は最低って事で、涙は女の敵だに繋がる。 「あのとき俺が何て言われたか知ってるか?」 「あのとき?」 「別れて割とすぐ、俺と〇〇がカヅサの研究室にいて、お前が来たときがあったろ」 首を傾げるエミナ。 「俺に用事があったのに、〇〇に連れていかれただろ」 まだピンときていないらしい。 「カヅサの部屋に、…害虫が出たってとき」 「ああ」 ようやく合点がいったようだ。 「あのときアイツさ」 クラサメは溜め息を付いて話し始めた。 □ □ □ 言い付けられた所用でカヅサの部屋に行ったときの事だった。 資料を貰い、教官に届けるため部屋を出ようとしたとき、勢いよく扉が開いた。 「見つけた!!あんた何してくれてんのよ!!」 肩を怒らせて入ってきたのは〇〇。 訳がわからずクラサメとカヅサは視線を交わす。 「えーと、何の事だろう?」 「大声で怒鳴る前に扉を閉めろ」 肩で息をしながら、とりあえず扉は閉める。 「そこの朴念仁!!」 「俺?」 指さされているのはクラサメだ。 カヅサの部屋なので、てっきりカヅサだと思っていたのだが。 「何したのさ」 矛先がクラサメだとわかり、カヅサは立ち上がった。 思い当たる節が無いクラサメは、冷蔵庫を開けてコーヒーを注ぐカヅサに向かって肩を竦める。 「特に心当たりは」 「無いってか!!」 がるると顔を真っ赤にして唸る〇〇。 「はいどうぞ」 「ありがとう!!」 アイスコーヒーが入れられたビーカーを受け取り、ごくごくと嚥下する。 一気に飲み干してテーブルに積まれた本の上に勢いよく置いた。 「私の大切な友達に何してくれてんのよって!!」 「だから。何なんだって」 「エミナの事よ!!」 エミナ? 眉をしかめて考えるがわからない。 「なんかしたの?」 「いや?この間別れただけ」 「だけ?だけですって!?」 信じられない!信っじられない!! 頭を掻きむしりながら歩き回る〇〇。 「だから朴念仁だっていうのよ!ああもうエミナ可哀相!男運悪いんだ!!」 「ちょっと待てお前なんか誤解」 「言い訳するな!女の敵め!!」 あんたなんか!あんたなんかねえ!! そして〇〇は聞いた事の無いフレーズを口にした。 −−−−−− エミナ大好き〇〇さん。 全ては愛故。(と、言えばなんでも許されると思ってます←) |