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□アイスファイア
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 ■ ■ ■




「やっ…と着いた〜」


 チョコボから降りた〇〇は大きな伸びをした。

 それはチョコボも同じで、身軽になったのが嬉しいように2回跳ねた。


「お尻痛くなーい?疲れたぁ〜もう帰りたいよー」

「今来たばっかりじゃん!」


 愚痴をこぼしながらチョコボから降りるクラスメイトを介助する。


 見渡すと他の生徒も鞍から荷物を下ろしていた。


 たっぷり時間を掛けたどり着いた、眼前に広がる街。


 ここはメロエだ。


 大所帯での軍行だったため、危険なモンスターを避け時間を掛けた安全策を取った。

 魔導院を出立したのはまだ日も高かった一三〇〇。

 真上からだった日差しは大分傾いている。


「本日はここメロエで一泊し、明日の〇6〇〇にベスネル鍾乳洞に出立だ。各自、充分に装備の確認、身体のケアをしておけ。再三言っているが、ミッション内容を頭に叩き込むのも怠るな。それまでの時間の使い方は自由とする。候補生としての自覚を持ち、節度ある行動を心掛けよ。以上」


 今回のミッションを指揮する教官に解散と告げられて、候補生は地面に置いた装備品を持ち上げた。

 足取り重く、魔導院所有のホテルへと向かう。


「やっと自由時間〜〇〇っ、早く部屋行こ」

「荷物ッ!」


 スカートのすそを払い、私物だけを持って歩きだそうとしたクラスメイトを引き止める。

 だって重いんだもん、と唇を尖らせたから、忘れたというよりは考えたくなかったようだ。

 しぶしぶかばんを引きずる。


「わあっ!大事な装備品じゃん!引きずっちゃダメだよ!」


 慌ててたしなめても、だって重いんだもん、の一点張り。

 〇〇はため息をついてクラスメイトのかばんも肩に掛けた。


「しょうがないな、持ってあげるよ…。替わりにこっちお願いね」


 渡したのは〇〇の私物である小振りの鞄。


「さっすが〇〇!頼りになるぅ」


 ぴょこんと抱き着いて軽いそれを手に持ち、クラスメイトと〇〇はホテルへと向かった。



「ポーション、エーテル、あと煙幕、過不足ナシ。…いや、ポーションもう少しあった方がいいかな?」


 寄宿するホテルに着いた〇〇はベッドの上に鞄の中身を全て出し、指差し確認でリストと照合していく。


「ねーえー?マッサージしてくれるって約束したじゃーん」


 振り返ると部屋着に着替えたルームメイトがベッドで雑誌を読んでいた。

 シャワー上がりなので髪がまだ濡れている。


 候補生用に誂えられた狭い室内は、扉を開けて正面にベッドを二つ構え、間に小さなサイドテーブルが一つ。

 装備品を収納するためか大きめの戸棚がベッドの足元に配されていて、残りの設備といえば洗面所、シャワールーム、トイレくらいのシンプルな造りだ。


「マッサージしたら寝ちゃうじゃん。教官に言われたでしょ、先に確認してから」


 読んでいた雑誌を取り上げると渋々とではあるがチェックを始めた。


「あ、でもしてあげるけど先に外出してきてからでいい?ポーション足しとこうかなって思って」


 その言葉に不服そうな声を出して〇〇の方へ振り向いた。


「そんなの明日従卒から貰えばいいじゃん」


 そうなんだけどさ。

 ポーションを手で弄び、昔の記憶を遡る。

 前に一度怒られたコトが…。


「〇〇?」


 もごもごと不明瞭に呟く〇〇に、ルームメイトは怪訝な表情を向けた。


「いやこっちの話。…ついでに街もまわってこようかなって」


 最後のポーションをかばんに詰めて、バスタオルを手にする。


「ねぇ、前に来たことあるんだよね?どっかイイトコない?」


 シャワールームに入る直前、返ってきたのは気のない返事だった。


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