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□zero sum visitor
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晴れ渡る空、きらめく水面、照り返す白浜。
ロケーションとしては最高のインスマ海岸で、〇〇は強すぎる日差しに目を細めながら手でひさしを作り一帯を見渡した。
トグア方面から蒼龍領に入りマハマユリへと北上。
そこから定期便の飛空艇を利用しミィコウに乗り付け、キザイア、アクヴィを巡視し、十日間程の行程を終える予定だったのだが、今朝クラサメから連絡があった。
ー〇〇、今どこだキザイア辺りか?
ん、ミィコウだよ、これからキザイアに行くところ。
ーキザイアの住人から気になる報告があった。インスマ海岸沖で雷を目撃したと。
雷?
ーああ。真昼に、一度きり、だそうだ。
う〜ん。
ー証言は複数だ。無下には出来ない。中には外出が難しいほどの者もでているそうだ。
みんな…怖い思いしたもんね。
ー…ああ。安心させてやってくれ。何もないと。
わかった。じゃあインスマ寄ってから帰院するね。
そういったやりとりがあり、〇〇は今インスマ海岸を散策しているわけだが特に異常は見られない。
「落雷受けた木とかもなさげだしなあ。なんだろう…。ただの青天の霹靂…?ただのってのも、変なハナシだけど」
些細な異常に敏感になってしまっている。
目撃者がひとりではないので勘違いではと安直に片付けられないが、何かしらの自然現象だったのかもしれない。
異常無し。安心してください。
いい報告が出来そうだ。
「にしても、天気いいなあ…」
頭皮が焦げてしまいそうだ。
額ににじむ汗を拭ってポーチから随分温くなった水を取り出す。
喉を潤した〇〇は樹木が身を寄せ合って群生している一帯を抜け、岩肌に手をついて開けた高台に登った。
きつい日差しを鏡のようにそっくり反射させる水面と砂浜に、じわりと瞳に涙がにじむ。
その悲鳴を無視して目を酷使した甲斐あって、〇〇は何かを見つけた。
「何あの黒いの…」
〇〇が凝視しているのは、ここからくびれを挟んだ小島。
寄せては返す波の花が美しい海岸線に異質な黒い物体を発見し、そぐわないそれを見て血の気が引いた。
ウソ…!人…!?
物ではない。倒れている人だ。
意識がないのか波に遊ばれる衣以外に動いている様子がない。
まずい。これから満潮に向かうはずだ。
あのままあそこにいては潮にさらわれてしまう。
一抹の不安が頭をよぎるがそれを無視して〇〇は走り出した。