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□distance 2
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夢のよう。
包んでくれているあたたかい温もりは確かなのにまだ信じられない。
時間が止まればいいのに、と願いながら、しかし〇〇はCOMMの震動を感じて現実に引き戻された。
ちゃんとした返事をしていないまま通信途中でクラサメに奪われたままだ。
小さく呟きを漏らした〇〇にクラサメも腕の力を緩める。
「顔色は戻ったな」
頬に手が添えられる。
戻ったどころか赤くないかどうか心配だ。
「行ってくるといい。過度なトレーニングはしないように。...トレーニングになるかどうか、怪しいものだがな」
「え...」
それってどういう...。
体調を気遣ってくれてるのかなと首を傾げながら返してもらったCOMMを耳に装着しているとまた震動した。
〇〇がふわふわしていて気付かなかっただけで、もしかしたら引っ切り無しに鳴っていたのだろうか。
「遅くなってごめんなさいあの」
「ちょっと〜!!聞こえてないの〜!?〇〇ーたいちょー」
「もしも〜し!もしも〜し!!もしも〜し!!」
「おとなしく待ってれば応答あるだろう」
「そうそう。そんなにがっつかなくても」
「手遅れになったらどうすんだアァン!?」
「うるさいな。頭痛いんだけど」
えーと...。
一体何が...。
「あ...の?...エース?じゃないの?シンク?」
だけじゃない。
みんなの声が聞こえる。
「エース〜...?」
「〇〇!?〇〇だ!!ねぇちょっとみんな!!」
「ようやく応答ありか」
「おう無事か!?」
耳元の大声に肩を竦め、思わずCOMMを外してしまった。
「無事...?え、ああ、えっと、うん。ごめんなさい心配掛けて。今から行きます」
「そんなコトより〜!」
「いや来てもらった方が早いだろう」
「そうよねっ!お菓子用意しとかなきゃ」
「ジャックもナインもエイトもエースも帰ってヨシ!」
「うーわっまたこのパターン?」
「ずりぃじゃねぇか!!」
い、今から行きま〜す...。
...誰か聞いているのだろうか。
独り言に近いカンジでそう締めくくり、腑に落ちないと首を捻りながら〇〇は通信を切った。