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□結果オーライ?
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「クラサメくん?」
遠慮がちにノックをされ、磨りガラス越しに見えたのは〇〇のシルエット。
「どうした」
「お背中お流しします」
開けたすき間から顔だけを覗かせて小首を傾げる恋人に断る理由はない。
「お願いしようか」
「うんっ」
髪の毛を泡立てたまま少しだけ固まったのは珍しい事を言われたからだ。
いつもであれば、一緒に入ってもいい?と言う。
背中を流す、という事は共に入りはしないという事だ。
「珍しいな。どうした」
「そ、そうかな?」
着ているものもバスタオルではなく、クラサメのシャツ。
やはりバスタブにつかる気はないようで、袖を捲くってクラサメの背中に回る。
「お勤めご苦労様です」
ボディソープをタオルで泡立てた〇〇は鏡越しに笑いかけ、労るようにクラサメの背中をこすり始めた。
「何か企んでるだろ」
「た、企んでるだなんてっ…」
なされるがままに任せていたクラサメは首を捻って〇〇を仰いだ。
「企んで…た、企んで…」
企んでるかも、デス…。
正直に、というよりは素直で隠し事が出来ない〇〇は観念して頬をかいた。
「白状しろ」
「きゃっ」
髪の毛を触ってから〇〇の鼻を弾くと、頬を膨らませた〇〇はシャンプーの泡を付けたまま強く背中をこすって抗議した。
「何か壊したのか?」
「違うよ」
「欲しいものがあるとか」
「充分いただいてます」
「何かお願いか?」
「ん〜…」
「当たらずとも遠からず、か」
唸りながら考え事を始めた〇〇は手の動きが疎かになっていた。
「お願い…じゃないけど…クラサメくんじゃないとダメな事、かな。…し、仕掛け。そう!仕掛け!」
しっくりくる言葉を見つけたらしい〇〇はまたごしごしと背中をこすり始めた。
「どんな仕掛けだ?」
「もう少しでわかるから」
「私はただ待っていればいいんだな?」
「うん」
張り切って背中を流す〇〇を微笑ましく感じながらクラサメは瞳を閉じた。
どんな可愛らしい仕掛けだろう。
リビングにサプライズでもあるのだろうか。
変に思考を巡らせないようにしながら〇〇の鼻唄に耳を傾けた。