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□おかえり 中編
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「ボス...ユヒカさんって女の人だったんだね」
「言ってなかったか?」
「言ってなかったですよ...」
名前は聞いていなかったし、ボス、というコードネームから勝手に男の人だと思い込んでいた。
唇を尖らせた〇〇は汗のかいたグラスを手に取る。
「どうりで会わせたくなかったはずだよ。...すごい美人」
「...またはやとちりしてないか?」
机に道具を並べて自らの武器をメンテナンスしていたクラサメは、氷剣を置いて椅子の背もたれに腕を乗せた。
「ユヒカさんが女性だから会わせたくなかったわけではない。ただ...実感出来たと思うが威圧感が凄まじいだろう。...〇〇には、毒が強すぎると思ったんだ」
「それだけ?」
〇〇も振り向いてソファーの背もたれに顎を乗せる。
「本当だ。あの人とどうにか、などと考えた事は一度もない。向こうも同じだ」
「あんなに綺麗な人なのに...。彫刻みたいじゃない」
「彫刻...確かにな。腹筋割れてるんだぞあの人」
「...なんで知ってるの?」
苦笑したクラサメはソファーの背もたれに腰を下ろし〇〇の頭を撫でた。
「突っ掛かってくれるなよ。私が心休まるのは〇〇の傍だけだ。あの人の傍でなど一瞬たりとも気が抜けないじゃないか」
小さく笑った〇〇はクラサメの腰に腕を回した。
「肉食系女子?」
「...骨まで残らず喰われそうだ」
渋い相好のクラサメ。
数回しか会った事はなくともその様は想像出来て思わず笑う。
「じゃあクラサメくんは草食系男子?」
「どうだろうな」
太ももに擦り寄る恋人の頭を撫でながらクラサメは首を傾げる。
「判断は〇〇に任せよう」
〇〇との相性さえ良ければ誰がどう評価をしようと構わない。
そう言って〇〇の髪を一房すくい上げ唇を寄せた。