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□おかえり 中編
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「アレが何回見せろと言っても頑なに見せなかった恋人か」
椅子に座り、頬杖をついたまま瞳を細めてクラサメを見るユヒカ。
クラサメは仏頂面のままそれには答えなかったが、しかしそれが肯定である事は一目瞭然だった。
「あっちにもこっちにも理由を付けて引き離してたんだろ?クラ子ちゃんてば陰険ー」
「紹介する理由がありません」
パネルを操作して今日の演習実地場所を壁に投影させる。
「なぁクラ子」
「それ。やめて頂くように言いましたよね何回も」
あだ名がついてからは憮然としながらも勝手にさせていた。
だが
〇〇が配置されると決まって。
実はクラ子と呼ばれているなど、知られたいわけがない。
何回も。
何十回も。
その呼び方をやめてくれと言ったのだが灰汁の強い仲間は誰一人として首を縦に振らない。
言えば言う程逆効果な気もするが、しかし言わないわけにはいかなかったのだ。
「一人が嫌なら俺にも子付けていいぜ?ほら呼んでみー。ビャッ子ー」
「嫌ですそして重たいです」
「いいじゃねぇかよ照れてんの?」
「どこに照れる理由がありますか。なんで成人した男二人、女子みたいに呼び合わなくてはならないんですか!」
何度払いのけてもクラサメにしな垂れかかるビャクヤ。
払いのけるうちに結局組み手となった。
「「あ」」
「ね?仲いいんだよ僕ら」
「えっと...」
にこにこと笑うカオンと、目をしばたかせて首を傾げる〇〇。
いつの間にか戻ってきた二人にユヒカが声を掛ける。
「アップ中だ。邪魔をしてくれるな」
じゃあおとなしく待ってましょうねとユヒカの傍に〇〇を座らせたカオン。
「アップ中ですってよ、俺たち」
こそりと耳打ちされたそれには応えず、クラサメは腕を抜いて裏鉄槌を繰り出した。