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□Please... after
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 頬杖をついて眺めるも、〇〇は膝の上で拳を握ったまま動かなかった。
 
 
 少し言い過ぎたかとも思うがその考えはすぐに否定する。
 
 いつも気付いた事は言っているつもりだが一向に改善されることがないのだ。
 
 こういう機会に本気で言いでもしないと〇〇には響かない。
 
 
 言ったからには響いてほしいものだが。
 
 
「お嬢様?」
 
 
 声を掛けると、〇〇は更に強く拳を握り絞り出すように呟いた。
 
 
「ご指導、ありがとうございます。今後とも変わらぬご愛顧をお願いします」
 
 
 一瞬だけクラサメにぶつけられた視線。
 
 悔しさからか涙目にはなっていたが、言葉は冷静。
 
 
 口答えや逆ギレされなくて良かった。
 
 捩じ伏せるつもりだったけれど。
 
 
 〇〇は公私の切り替えは上手い。
 
 
「そうですね。これからも気には掛けて差し上げましょう」
 
 再び俯いている〇〇の頭を撫でる。
 
「ですが何度も言わせないでください。好きで言っているわけではありません」
 
 
 あまり言って嫌われたくないというのが本音。
 
 
 頷きながら〇〇は謝罪した。
 
 
「懲りてくだされば結構」
 
 
 〇〇から手を離し、背もたれに身体を預ける。
 
 
「怒ったら喉が渇きました」
 
 
 ちらりと冷蔵庫に視線を向けると〇〇が立ち上がった。
 
 
「私も、怒られたら喉渇いた。持ってくるね。クラサメは、何、飲みますか?」
 
 
 少し遠慮がちにクラサメの顔を伺う。
 
 
「...では、ココアを」
 
 
 ホットで。
 
 
「喉渇いたのにホットなの?」
 
 続いた言葉に〇〇は小さく笑うも、かしこまりましたと礼をしてキッチンへ向かった。
 
 
 クラサメに言わせれば何故怒られて喉が渇くのか。そちらの方が疑問なのだが。
 
 
 気分転換のために口にしただけで、ココアならアイスよりホットの方が好みなだけ。
 
 
 喉は渇いてない。
 
 
 お嬢様に用意させるとは執事失格ですかね。
 
 
 クラサメも組んでいた脚を解き、立ち上がった。
 
 
 
 
ーーーーーー
 
公私混同はしないタイプの二人。
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