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 魔導院に到着しチョコボから降りたクラサメは、続いて降りる〇〇を介助する。そして地に足をつけたのを確認するなり踵を返した。
 
 
 その大股たるや。
 
 
 眼鏡を外してジャケットの内ポケットにしまい、氷剣を召喚してマスクを嵌めすぐに帰還させる。
 
 
 その一連の動作中も一向に緩まない。
 
 
 マジで怒ってる...。
 
 
 
 そのまま自分の部屋に帰ってくれればいいナ、なんて思うも、〇〇がついてきていないとわかるとクラサメは足を止めて何度も振り返った。
 
 
 ついていく〇〇は小走りだ。
 
 
 足音を吸収するカーペットにもかかわらず、静まり返った廊下には怒りに満ちた足音とそれに縋るヒールの音だけが響く。
 
 
 幸い、知り合いに出くわすことは無かった。
 
 部屋前に着いたクラサメは開錠を求めるように無言で〇〇を睨みつける。
 
 そのプレッシャーもあって、いつもよりもたつきながらも〇〇はコードを入力した。
 
 
 重い足取りで部屋に入る〇〇。
 
 眉間にしわを刻みながらその後に続いたクラサメは、部屋に入るなり腕に掛けていたジャケットをソファーに放り、乱雑にネクタイを緩めてマスクを外した。
 
 
「上官からの有り難いお言葉だ。心して聞くがいい」
 
 
 その言葉はコートのボタンを外していた〇〇の背に掛けられた。
 
 
「そこに座れ」
 
 
 顎で指されたのは一人掛けのソファー。
 
 クラサメはというと、机から椅子を引き寄せていた。
 
 
 ああシャレにならない。
 
 本当に、文字通り膝詰めだ。
 
 
 のそのそコートを脱いでソファーの背に掛けた〇〇は、クラサメに指定されたソファーに向かう。
 
 
「飲み物、いる?」
 
「いらん」
 
 
 伺い立てすら一刀両断。
 
 おとなしく引き下がりソファーに座ると、クラサメは〇〇の真ん前に椅子を引き寄せ脚を組んだ。
 
 
「レアな執事口調の俺と、このままのいつもの俺。どっちで説き伏せられたい?」
 
 
 甘口か辛口かという選択肢ですらない。
 
 
 言ってしまえば怒られたいわけがないのだが。
 
 
 そんな事が言える空気でもなく。
 
 
「いつもの、クラサメさんでお願いします」
 
 
 冷ややかな視線は合わせ続ける事が出来ず、〇〇は瞳を忙しなく動かす。
 
 
「...わかった」
 
 
 承諾の言葉は溜め息と共に吐き出された。
 
 
 長くなるんだろうな。
 
 
 だけど八つ当たりではなく見当違いな事でもないのだ。きっと。
 
 
 有り難いと思わねばならない。
 
 そうは思うが、〇〇もこっそりため息を漏らした。
 
 
 
 
ーーーーーー
 
執事がご立腹。
 
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