カヅサの部屋にお邪魔した〇〇はテーブルの前でポテトをぱくぱく口に運び続けていた。 二人部屋に今は8人。 椅子やベッドなど座るところはすでに埋まっていたため〇〇は直にカーペットの上に座っていた。 飛び交う会話の焦点はやはりあの記号。 「なんかみんな違うね。いくつあるんだろ」 カヅサがパンにバターを付けて口に運びながら呟いた。 10コ程であろうと踏んでいたアルファベットは、確認出来た最も遠いものでR。 数えで18番目だ。 「エミナちゃんは、E…だっけ」 先程飛び交っていたアルファベットを思い出しながら、〇〇はベッドに腰掛けているエミナを振り仰いだ。 優雅に脚を組んで野菜スティックを口に運んでいる。 可愛いなぁ。 性別も食べ方も自分と変わらないはずなのに。 量か?速度か?色か? 片や脚を組んで野菜スティックを数本。 片や床にベタ座りでシューストリングポテトを一皿(完食)。 …私も野菜スティック貰おうかな。 じゃなくて。 「エミナちゃん?」 今確かに目が合ったのにエミナはツンと横を向いた。 心当たりは…なくもない。 「エミナちゃ…」 …エミナ? ぽそりと小さく小さく名前を呼ぶ。 「そうよ?E。〇〇と同じじゃなくて残念」 うわぁ! 向けられた綺麗な笑顔に思わず赤面する。 上半期一の出来事。 女神様のような女の子とお友達になれた事。 「う、うん!私もエミナちゃ、エミナと一緒じゃなくて残念!」 女神様は呼び捨てをご所望だった。 以外と身近な存在。 「何組に別れてるのかわからないけど、他に同じ人いないかしら?知らない?」 くすくす笑いながら、セロリとニンジンを同時に食べる〇〇に問い掛ける。 「私のルームメイト、Eって言ってた」 「そう。どんな子?」 「えーっとね。サバサバした性格で、身体動かすのが好きで。ベリーショートで手足長くって」 手にしたキュウリを振りながら考え考え口にする。 「もしかして、アリィ?」 「あ、うん。知ってた?」 エミナはフルーツトマトを手に取りながら頷いた。 男女関わらず顔が広いエミナ。 名前出せば早かったな。 「何をするにせよ、心強いわね」 「私も一緒が良かったな〜。チームエミナ…」 〇〇の呟きにみんなの視線が集まる。 「え、何?」 「チームエミナって…なんだい?」 眼鏡を上げながらカヅサが首を傾げる。 「私が班長なのかしら?」 エミナも唇に人差し指を当てた。 「エミナの…Eだから…」 チームエミナ…。 言葉は尻窄まりになる。注がれる視線が痛い。 「あははッ面白いコト言うね〇〇って。んじゃオレは?GだよG」 「えと、チーム頑張りましょう?」 「うわッなんか佳作みてえ!」 なんだよそれーとまた笑いが起こる。 チームベストフレンズ。 チームライジングサン。 チームクールビューティ。 せがまれるままに様々な名前を口にする度にわいわいと会話が弾む。 「〇〇ちゃんは…さしずめチームプリティかな?」 「わわ私がッ?」 自分のコトは考えてなかった。 というかEだってさっき思い付いただけである。 「ねえボクは?MだよM」 「どうせならS貰っときゃ良かったのになあ?」 金髪男子がカヅサを肘でつつく。 「そりゃあ女の子に乗られるのは好きじゃないけど」 「ハハッ変態発言ー。Hでもよかったかもな」 まーまー、み…むー…め、も…。 ぶつぶつと考え込んでいた〇〇はカヅサの催促に顔を上げた。 「ねえ。M」 「M.A.D」 「え?何?」 聞き慣れない単語にエミナが聞き返しカヅサは目を見張った。 |