「も、ぃい、ゃ、だ」 「酒のせいか?全然止まらないな。…ああほら」 流れてる。 そう言ってクラサメは舌先で肌をなぞった。 「ひぁ…ンッ!や、は、ァン…!」 思わず出てしまった声に目を見張る。 これではまるで。 い、やだ。嫌だ。 「もっと、鳴け」 泣くもんか!! 「ゃッぁ…ンッ!ヤダッ!ヤダヤダッ!クラ、サメ!」 「煩い」 やだやだ言ってたら苺を押し込まれた。 指も入ってきた。 ヤ、だ。 出てってよ! 泣かない。けれど泣きたい。 引っ張られたシャツのせいで更に息が苦しい。 「く、るし、く、び」 「悪い」 謝っているのにシャツを持った手は緩めない。 「ボタン、外せ」 今。なんて。 思考がフリーズする。 その隙にボタンを一つ外された。 「ちょッ」 「発言を許した覚えは無いが?」 しゃべろうとしたらまた口に指が入ってきた。 眉間にしわを寄せぎゅうっとキツく目を閉じる。 私の好きな手でこんなコトしないで。 私の好きな声でそんなを言わないで。 やめて。 やめてよクラサメ。 こんな、酔った勢いなんかで崩していい関係じゃないよ。 明日からまた今まで通り、なんて、そんな器用なコト、出来ないよ。 イヤだ。 やめて。 やめてったら! 開いた瞳で捉えたのはクラサメの従者。 いつからいたのよ!? ごめんクラサメ!!でもあんたが悪い! 口内にあった指を、謝りながらも全力でかじった。 なんとかクラサメの腕の中から逃げ仰せた〇〇は背を向けてシャツのボタンを留め、肩でしている呼吸を整えた。 そのまま立ち去ろうかとも思ったが。 「教育的指導ー!!」 ビシィッと指を突き付けクラサメを振り返る。 「…は?」 「精神衛生上、よろしくありません!!」 更にビシィと両手でトンベリを指す。 ホント、いつの間に帰ってきてたのか。 「…居なかったら、良かったのか?」 「そうじゃないわよ!こンのスケコマシの朴念仁!!女ったらしの唐変木!!」 涼しい顔で頬杖を付くクラサメを睨む。 そゆ問題じゃないわよ馬鹿たれ! 「…見事な反語だな」 「揚げ足取るな!女の敵め!!」 再びクラサメを指差して大声で怒鳴り付ける。 「あんたが酒弱いのは知ってたけど!こんっなに酒癖が悪いとは思わなかったわ!!今日は!…誕生日だし!飲ませた私も悪いし!モルボルの臭い息に当てられたと思って忘れてあげるわよ!!」 「…も、帰れ、お前」 ナニ脱力してんのよ!こっちがしたいわよ! 「帰るわよ!!当たり前よ!!あんたの誕生日はもう終わってんだから!!」 時計を見ると、零時はとっくに過ぎていた。 |