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□Please yourself
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 水であれば一口で飲み干せそうな量を注いではゆっくり飲み、また注いではゆっくり飲む。


「面倒じゃないのか。それ」


 何故なみなみと注がないのか。


「こういうお酒は、ちっちゃいグラスに入れて少しずつ飲むものなの」


 クラサメが用意したピューターは、冷たいものは冷たいまま、熱いものは熱いまま保つ事に優れた錫製の容器。

 ビールやウイスキーなどを入れるには最適だが、地酒を入れるサイズではない。

 が、クラサメの部屋にそのサイズのグラスがあるとも思えないのでそのまま飲んでいる。


「お気になさらず」


 酒飲みの醍醐味を理解する気もないクラサメは、気のない返事をしてプリンに取り掛かった。


「そういやお前、酔っても変わらないんだったか」


 一度だけエミナとカヅサと4人で飲んだ事があるが、飲めないとわかって以来クラサメが参加した事はない。

 そのときも真っ先に潰れた。


 何度かあった同期との飲みの席でも、クラサメは飲まない。

 ただ、やたら絡んでくるヤツや笑い上戸などのあしらいが面倒だった覚えはある。


「そだね。あんまり変わんないケド…陽気にはなるかな。あ、あとよくしゃべる」

「…普段よりか」

「失敬な!これでも面倒見いいんだよ?お酒には強い方だから、先に潰れたコの介抱とかして」


 ふふふと得意げに笑う〇〇の頬はほんのり上気している。


「ああでも一回…いや二回かな、記憶飛ばしたコトあるなー。体調悪かったのに無理して参加したんだよねー」


 エミナに世話になっちゃった。

 そう言って酒を嚥下し、また注ぐ。


 酒に強いヤツでも記憶飛ばす事があるんだな。


 記憶を無くすのは酒に弱い人に限った事ではないらしい。


「ところでトンベリは?」


 見当たらないケド、と身体を捻って室内を見回す。


「さあな。仲間でも探してるんじゃないのか」


 気付くとトンベリがいない事が度々ある。

 耳にした目撃例からするに、どうやら他の従者を探して学院内を徘徊しているようだ。

 朝になれば戻っているし、不自由があるわけではないので好きにさせている。


「寂しいのかな…やっぱ」

「どうだろうな」


 その機微は、クラサメにはわからない。


「この時雨月、誰から貰ったの?」


 また話が飛んだ。

 それが〇〇だからなのか酔いのせいか、判断が付かない。


「…ボスからだ」

「ボ」

「ああ。四天王の」


 〇〇は奇声をあげて立ち上がった。

 うっすら涙さえ浮かべている。


「ののの飲んじゃった!ごめんクラサメ!てかあんたが飲みなさいよ!!私が飲んでいいものじゃ」

「いいんだ。俺の物をどうするかは俺が決める。気にするな」

「でも」

「くどい」


 言葉に詰まった〇〇はすとんとソファに収まった。


「じゃあせめて大事に頂きます…。ああ付加価値が付いて旨さ150%、ついでに今立って一気に酔いも回った…」

「…付加価値で50%も上乗せかよ」

「だって四天王だよ!?」

「…俺は?」

「あんたは別」


 なんで別なんだろう。

 一応、元四天王なんだが。


「ビャクヤさんに貰ったアクセサリー、まだ付けてるんだ」


 シャツの上から左の肘上を触る。


「ベスネルでは世話になったんだったな」


 クラサメは覚えていない。


「お前、まだ付けてるのか。日記」


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