「ブリザド!」 「ケアル!」 「ブリザド!」 「ケアル!!」 「ブリザド!」 「ケアル!!!」 「ブリザ」 「先輩!!ブリザドもういいですから!!フレイムプリンとっくに死んでます!!!」 「そうか」 あぁ視界悪…。 ブリザドによりプリンの熱を奪った水蒸気が発生したため辺り一面もうもうとしている。一種のサウナ状態だ。 全く、少しはチームのコトも考えてほしい…。 いやそんなことよりも。 「むしろ珍しくアイスプリンが一緒にいるんで次ファイアお願いします!!!」 「断る」 「は!?」 「MPが尽きたからな」 〜〜嘘つけこの鉄仮面野郎がー!!!!!! 視界が悪いのをいいことに、声のする方向へ女子としてあるまじきガンたれをかます。 絶対ファイア使いたくないだけだ! 絶っ対そうだ!! 「ウォール!!」 怒りに任せて、疲弊しているクラスメイトを囲うように3枚出現させる。 「ちょっと待っててね、すぐに戻るから」 「悪ぃ…」 いやあんたは何にも悪くないよ。 誰が悪いかといえばヤツで、何が悪いかといえばブリザド連発だろ。成績も実技も悪くないあんたをパニクらせたのは間違いなくあの人だ。 収まってきた水蒸気の向こうに見える人影。 合間に一瞬見えた目は間違いなくこっちに向けられていて。 私の思い違いでなければ、その瞳は楽しんでるようにも見えた。 くっそ! 「ファイア」 せっかく収まりつつある水蒸気がまた密度を増した。 「ファイア!」 またしても見えなくなった人影を睨みながら、プリンの気配がする方へ魔法を連発。 「ファイア!ファイア!ファイア!!〜〜〜ファイガ!!!!」 恨みつらみを込めて特大の魔法を打ち込むと、嫌な臭いを残しモンスターの気配はなくなった。 肩で息をしながら重くなった制服の裾を絞ると、ぽたぽたと雫が落ちる。それほどに濃い水蒸気が発生しているのだ。 膝に手を付き手の甲で頬を拭う。 大分前から息苦しい。 呼吸を整えていたところへ背後から声が降ってきた。 「ご苦労」 ピキ…ッ …下を向いていて良かった。 今、人様に見せられる顔をしてる自信は無い。 「…お疲れさまでした」 スカートのシワを軽く叩いて延ばす。 「“MPが尽きる程までに"お手を煩わせてしまって申し訳ありません」 さぞやお疲れでしょうよ。 捨て鉢になりながらも失礼に当たるので向き直ると、そこには腕を組んでこちらを見下ろすクラサメがいた。 お疲れの様子は、無い。 …予想はしてた。 ええ予想はしてましたよ。 だけどさ。まがりなりにもMPが尽きたって言った手前、ポーズだけでもしてくれていいんじゃないか…!? いやいや大人になれ私。 もうすぐ16の誕生日を迎えるんだから。 大人大人大人。 「体力の強化が課題だな。あと敵の力量に見合った魔法レベルの選択を心掛けろ。あの程度にファイガは必要ない」 額に張り付いた髪をかきあげながら、やはり息苦しいのかマスクをずらす。 「すいませんでした!!先輩も動けないようでしたので!少々混乱してしまったみたいです!!」 殊更に語尾を強調してみる。 「平常心を保つように普段から心掛けろ」 嫌味だっつのこの野郎! 全っ然効かないし!! |