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□おかえり 中編
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ああどうしよう。
「緊張してきた...」
ぽつりと漏らした呟きに、クラサメは安心させるように〇〇の頭を引き寄せた。
「今から?ちゃんと寝ておかないと体力もたないぞ」
「うん」
〇〇もクラサメに擦り寄り、掛け布団を引き上げる。
「がんばるね」
そう言って目を閉じた〇〇だが、撫でていたクラサメの手が止まった事に再び開ける。
「...本当に今の部署を辞めるのか?」
「何回も言ったでしょ」
「だが...」
「...クラサメくん、不満そう...」
私は一緒に居られる事が嬉しいのに。
〇〇はもそりと身体の向きを変え、クラサメに背を向けた。
「...不純な動機だけどさ。...でも精一杯がんばるもん」
「危険な事は...、させたくないんだ」
「私だって...。私だってクラサメくんに危険な事させたくない!...でもクラサメくんはいっちゃうんだもん!危険な所でも、...いっちゃうんだもん...」
「〇〇...」
「お荷物なのはわかるけど...防御魔法教えてもらって、スクリプターの勤めをまっとうして、傍に居れるならがんばるよ」
「...」
「待ってるのは嫌...」
私を置いていかないで。
「...泣かないでくれ」
「クラサメくんには待つ側の気持ちは...わからないよ。記憶が消えるかもって怯えた事、ある?」
強く、戦線に出ているクラサメには、祈るだけしか出来ずに帰りを待つ者の気持ちはわからないはずだ。
「あるよ。...私にだって怯える事くらい」
だから返ってきたその言葉は、意外だった。