ふしぎ星の話
□小高い丘で
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夕日が、大地を、空を、空気のすべてを染めていた。
それがあんまり赤くって、怖いくらいで、私はとなりにいた人の服の裾をつかんだ。
「どうした?」
あなたが聞くから。
「ふしぎ星の、すべてが変わっちゃうのかな…」
思わずそういってしまった。
「そんなことは、絶対、させてはいけない」
あなたがあんまり鋭い目で私をみたから、わたしは思わず息を飲む。
「うん、そうだね…」
わたしは小さい声でいった。
いまは、ブライトを元に戻すための旅の最中。
たまたま一人でいるシェイドをみつけたから、ちょっと話をした。そしてそのままなんとなくこの丘にのぼったのだけど。
ここからは、あたり一面がみわたせる。
地平線をじっとみつめていると、どうしてもこういいたくなった。
「ブライト、かわいそうだね、きっといまも一人ぼっちだよ…」
今度はシェイドは答えなかった。ただ、じっと下をむいて、自分の影帽子ばかりをみている。
そして、空が青黒くなった頃。
「もう、戻ろう」
そういって、あなたが手をさしだした。
その手をとろうと、手をのばしたとき、
「そういえば、あんたは、俺が悪人あつかいされてるときでも、いい人だっていってくれてたっけな。どんなときでも、ほかの人間をおもいやってやれるんだな」
その言葉を聴いた瞬間。胸が痛くなった。
ずっと、変な気がしていたの。
あなたが、エクリプスだと知ったとき、とても嬉しかった。
でも、あなたはいつも遠くって。
黒い服に身を包んでいても、あなたは月の国の王子だった。
私の知らない王子様。
そして、私が一緒にいたかった、エクリプスはなんだか消えてしまったようで。
さみしくて。
でも、あなたは、いた ね。
いま、ここに。
「おい?どうしたんだよ?!」
あなたが困った声をだす。
「どうしたって、なんで?」
「だって、泣きながら笑っているじゃないか?!」
あなたが私をのぞきこんで、ハンカチをだして、目をふいてくれる。
荒っぽい、エクリプス。
王子様のシェイド。
二人が私に話しかけてる。
なんだかとっても嬉しくて。
そのままずっと泣いちゃった。