ふしぎ星の話

□お昼ねルームと紙芝居
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ゆらゆらとゆれる、私の身体。
あったかくって気持ちいい。

遠ざかっていく、みんなのおしゃべりと音楽の音。

でも、全然、寂しくない。

温かい腕が私を包む。

優しく、優しく、ゆらゆらと。

******

心地いい声が低く、ゆっくり、おだやかに、耳のなかに響いてる。

誰の声?

「…そこで、うさこは考えました。どうしたら、みんなで一緒にあそべるかなあ?」

知ってる、この声。
とってもキレイで…世界で一番好きな声。

「うさこはピョンピョンと走っていって、丘の上までやってきました」

私のしっかり閉じていた瞳がゆっくり開く。
少しだけ薄暗い部屋。…カーテンが閉めてあるんだ。

「お月様、おねがいです。星中にちらばった私の仲間に教えてください。今夜、パーティーをひらくって!」

パチパチパチ、とその言葉を聞いて誰かが手をたたいた。音のほうに寝返りをうつと、少し離れたところの床の上にミルキーがちょこんと座り込んでいるのがみえる。

「嬉しいのか? ミルキー?」

満面の笑みで両手をたたくミルキーに紙芝居をみせているシェイドが笑いかけた。それから彼は紙芝居をめくるために手をかけながら妹に尋ねる。

「さてさて、これからどうなるでしょうか?」
「バブー!」
「そう。お月様はうさこの願いを聞き入れました。そうしてみるまにまぶしく輝きだすと…ヒュンッ、空のあちこちに向かって光のかけらを飛ばしました」
「バアー!」

スッとシェイドが紙芝居をめくると、次のページは紺色一緒の画面。そこに白い光が流れ星のように横切り、一匹のうさぎがそれを驚いた顔をして指差している。

「『あ! あれはなんだ?』うさこの仲間のぴょん太がさけぶと、光はぴょん太にいいました。『うさこちゃんのところに集まって。今夜、みんなでパーティーをするんだよ』」

それから紙芝居がめくられるたびに、仲間がひとりひとり、お月様の光のかけらの知らせをうけて、同じ場所に向かいだす。そんな話しがくりかえされた。

「みんながみんなが、集まってきた。うさこちゃんは大喜び。そうしてうさこたちはずっとダンスをしましたとさ。おーしーまい」

シェイドが紙芝居を自分の横に置くと、ミルキーは満足そうに笑ってから、コテンとカーペットの上に転がった。

転がったミルキーはなんだか真面目な顔をして宙のどこかをみつめ、シェイドにタオルケットをかけられると、ちっちゃな手でゆっくりと繰り返しタオルケットをなでる。

「眠くなったか」

シェイドがおでこをなでても、ミルキーは真面目な顔でどこかをみつめたまま。そうして、その瞳がフッと閉じ…フワッと一瞬開いて…またゆっくりと閉じると、それはもうそのままになった。

ふう、とシェイドが息をつく。それから彼は紙芝居を膝の上でトントンと整え始めた。

その姿をあんまりみつめすぎたせいか、彼がふと、顔をあげる。

目が、合った。

「…あ」

シェイドの瞳が大きく開く。私はなにかいい言葉をみつけなきゃ、と思いつつなにもいうことができなくて。

「お、おはよう…」

ドキドキしながらも、いつものごまかし笑いをしてしまう。

シェイドはなにかいおうとして…首を素早く振って言葉を飲み込み、そしてハア、とため息をつく。彼の頬がパッと赤く染まったのをみて、私はそれいじょういまのことにふれないようにしようと思った。

「あのっ…ミルキー寝ちゃったね」
「…ああ」

部屋のなかに沈黙がおりる。聞こえてくるのはかすかなミルキーの寝息。…でも、ちっともいやな静かさじゃない。

「パーティーに…戻るか?」

ようやくシェイドが口をきいた。

「え? あ、うん…」
「じゃあ、いくか」

スッと立ち上がる彼をみて、私は戸惑うように彼の小さな妹に顔を向けた。
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