ルハン

□ルフィ←ハンコック
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船の中。

ルフィは、もう朝だというのにベッドの上に大の字になって眠っている。
少し揺さぶる。
ぱちりと、目が開いた。
目覚めてまもない、ぼうっとした眠そうな表情でこちらを見つめてくる。


「おはよう・・・ハンモック」


・・・どれだけわらわがそなたを好きでいても。
伝わらぬ。
わらわの名前さえも、覚えてくれぬ男へ。
伝えるすべはたくさんあるはずであるのに。
そのすべてを使っても伝わる気がせぬ。
ほんのヒトカケラも届かない・・・。


「・・・おはよう、ルフィ。今日も元気そうでなによりじゃ」

「あー、ハラ減った。メシまだかなー?」


目をこすりながら腹の虫をぐうと鳴らし、笑顔をこちらに向けてくる。
愛しい、わらわの想い人・・・


「もうすぐじゃ。そう急くな」

「ああ。でも昨日の海王類のハムうまかったなあ。また今日も出るといいな、あれ」


すでに心ここにあらず、今日の朝ご飯の心配をしている男にひとつため息をつく。


「・・・ルフィ」

「ん?なんだ?」

「いや、なんでもない」


こんなに近くにいるのに。
そばにいる気がしないのは。
この胸が苦しいのは。
もうすぐ離れてしまうと分かっているからなのか。


「どうした?どっか痛えのか?」


すこししかめた顔を目ざとく見られてドキリとする。
・・・人の想いに鈍感なくせに、こういうことばかり聡いのは考えものだと思うが。


「少しだけ。・・・胸が」

「大丈夫か?ムリすんなよ。お前病み上がりなんだろ?」


優しい言葉に、しかし欲しいのはそんな言葉ではないと心が軋んだ。
欲張りな自らの心の声に、自嘲の笑みを浮かべる。


「ありがとう。ルフィ」


想いが伝わらずともよい。
せめて、もう少しだけ。そなたのそばに・・・。

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